研究課題
変異型PLC-delta 1(R257H)を血管平滑筋に過剰発現させたtransgenic mouse (PLC-TG)において、経静脈的エルゴノビン(50mg/kg)投与により誘発された冠攣縮は、カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム60mg/kg/日、経口投与14日間)により抑制されたが、利尿薬(トリクロルメチアジト1mg/kg/日)投与では抑制されなかった。マウス大動脈における電位依存性L型カルシウムチャネル(Cav1.2)の蛋白発現は、PLC-TGマウスにおいて野生型マウスと比較して有意に低下していた。一方、活性型L型カルシウムチャネルであるリン酸化Cav1.2の発現は、PLC-TGマウスにおいて亢進し、さらにリン酸化蛋白の割合(p-Cav1.2/Cav1.2)はPLC-TGマウスにおいて有意に亢進していた。ジルチアゼムはリン酸化Cav1.2の発現を抑制し、リン酸化蛋白の割合を有意に減少させた。Cav1.2のリン酸化に重要な役割を担っているPKC活性は、PLC-TGマウスにおいて有意に亢進し、ジルチアゼム投与により抑制された。以上のことから、電位依存性L型カルシウムチャネルの発現ならびにリン酸化の変化が冠攣縮の病態に関与していることが示唆され、カルシウム拮抗薬によるL型カルシウムチャネルの直接阻害と同時に、PKC抑制を介したL型カルシウムチャネルリン酸化の抑制が、カルシウム拮抗薬の冠攣縮治療の機序である可能性が示された。さらに細胞内カルシウムの動態に関与しているAKAP150蛋白のマウス大動脈における発現ついて、PLC-TGマウスと野生型マウスにおいてその発現に差を認めなかった。さらにAKAP150ノックアウト(AKAP150 KO)マウスとPLC-TGマウスを交配し、PLC-TG/AKAP150KOマウスを作製し、エルゴノビン投与により冠攣縮を誘発した。PLC-TGマウスで誘発された冠攣縮は、PLC-TG/AKAP150KOマウスでは抑制されなかった。以上から、PLC-TGマウスにおける冠攣縮発生機序へのAKAP150蛋白の関与は非常に限られている可能性が示唆された。
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Circ Cardiovasc Imaging
巻: 9 ページ: e003929
10.1161/CIRCIMAGING.115.003929
PLoS One
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