研究課題/領域番号 |
25860594
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村 貴裕 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60635598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 拡張型心筋症 / カテプシン |
研究実績の概要 |
本研究では,拡張型心筋症患者ヒト検体でのカテプシンK発現を確認し,心機能改善度,予後,その他有用な臨床指標との関連を検討することで,次世代の診断および発症予防法確立への応用展開するための基盤研究を行うことにある. まずわれわれは,心収縮予備能および運動耐容能と心機能改善度および予後との関連を検討した.低用量ドブタミン負荷における心収縮予備能(ΔLVdP/dtmax)は,心肺運動負荷試験における最大酸素摂取量(peakVO2)と有意に相関し,独立した規定因子であることを報告した(Int J Cardiol 2013).また,peakVO2およびΔLVdP/dtmaxは心不全の長期予後予測に有用な指標であることを報告した.さらに,MRI画像における遅延造影像は心筋間質の線維化を反映すると考えられており,拡張型心筋症患者59例の心筋検体を検討し,遅延造影群では心筋間質の線維化が強いことを確認し,ΔLVdP/dtminで評価される拡張障害が強いことを報告した(J Cardiac Fail 2013).続いて拡張型心筋症患者のサーカディアンリズム異常に着目し,78例を対象に24 hour ambulatory blood pressure monitoring(ABPM)を施行した.夜間に血圧の上昇するriserパターン患者では,疾患重症度が高く,標準治療下の長期予後も不良であることを報告した(Asian Pacific Congress of Heart Failure 2014, Best 10 Abstract).また,心臓超音波検査等では同定できない潜在性収縮同期障害を心筋シンチグラフィを用いて同定することで,拡張型心筋症の予後を早期に予測することが可能であり,その病態背景にはSERCA2異常が存在することを報告した(第18回日本心不全学会学術集会).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度において,申請者らは拡張型心筋症における収縮予備能と運動耐容能の関連および予後・心機能改善度との関連検討を行った.続いて平成26年度,カテプシンK血中濃度測定を施行したが,現時点で生理学的データとの有意な関連は得られていない。統計上,結果の正確な解析には相当数の検体を要すると思われる.採血及び心筋検体数を十分に確保したのち,心筋の構造的変化における解析へと研究を進める必要があると考え,さらなる確保の後,カテプシンK発現量の測定・解析を行うこととした.これに伴い,平成26年度までで終了する予定であった研究期間を平成27年度まで1年間延長した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,拡張型心筋症患者ヒト検体でのカテプシンK発現を確認し,臨床指標との関連を検討することで,次世代の診断および発症予防法確立への応用展開するための基盤研究を行うことである.平成25年度,拡張型心筋症における収縮予備能と運動耐容能の関連および予後・心機能改善度との関連検討を行い,平成26年度には,カテプシンK血中濃度測定を施行したが,現時点で生理学的データとの有意な関連は得られていない.このため,研究期間を平成27年度まで1年間延長したうえで,採血及び心筋検体数を十分に確保したのち,カテプシンK発現量の測定・解析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,ヒト血液あるいは心筋検体を用いてカテプシンKの発現確認を行うが,結果の解析には相当数の検体を必要とする.平成26年度には血液検体でのカテプシンK測定を実施したが,現時点で生理学的データとの有意な関連は得られなかった.採血および心筋検体数をさらに十分に確保したのち,心筋の構造的変化における解析へと研究を進める必要があると考え,心筋検体でのカテプシンK発現量の測定ができず,未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由により,平成27年度へ研究期間を延長のうえ,採血および心筋検体数をさらに確保したのち,カテプシンK発現量の測定・解析と業績発表を行うこととした.未使用額はその経費に充てる予定である.
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