研究課題
若手研究(B)
これまで我々はマグネタイト(Fe3O4)をリポソームで包埋した磁性ナノ微粒子 (Magnetic Cationic Liposome:MCL)と磁場を用いた三次元細胞シート技術 (Mag-TE法) を確立し、マウス重症下肢虚血モデルへの間葉系幹細胞シート移植が、従来の細胞浮遊液注入法に比べ有意に血流回復効果を有することを明らかとした。本研究ではMag-TE法を改良し、Mag-TE法と細胞外マトリックス(ECM)を組み合わせた新規細胞シート作成法の開発を行い、さらに本細胞シート作成技術を用いて、脂肪由来幹細胞(Adipose derived regenerative cells:ADRC)シートを作成しマウス心筋梗塞モデルへ移植を行い、心機能の改善効果を検討した。Mag-TE法とECMを組み合わせたADRCシートは約300μm(10~15層)の厚さを有し、ECMを包埋することによって従来の細胞シートよりも強固で移植操作性の向上した細胞シートの作成に成功した。マウス心筋梗塞モデルへ移植したADRCシートは移植2週間後においてもホスト心筋への生着が確認され、コントロール群に比べ有意な梗塞サイズの縮小、線維化の抑制が認められた。また、ADRCシート移植群においては有意な心機能改善効果が認められ、虚血心筋内の毛細血管密度の増加、アポトーシス細胞の減少が確認された。また、虚血心筋内において血管新生因子であるVEGF、bFGF遺伝子発現の増加が認められた。以上の結果から、ADSCシート移植は虚血心筋内への血管新生を誘導することにより、心筋リモデリングを抑制することが示唆された。本研究により、Mag-TE法と細胞外マトリックス(ECM)を組み合わせた細胞シート作成法によって作成されたADRCシート移植は虚血性心疾患に対する新規の治療法となり得ることが示された。
2: おおむね順調に進展している
細胞シート作成技術の改良により細胞シートの操作性が向上し、移植効率が格段に上昇したため、小動物への移植実験に関しては当初の計画通りに進んでいる。細胞シートの大型化については、最適な磁性体の選定にさらなる検討が必要と考えられる。
ADRCシートを移植後、3~6ヶ月程度の長期予後について心機能および生存率等の検討を行う。また、移植されたADRCシートの心筋細胞、血管系(内皮細胞、平滑筋細胞)への分化に関する検討を行なう。細胞シートの大型化に関しては、最適な磁石の選定と播種細胞数について詳細な検討を行なう。
平成25年度内に大型細胞シートの作成および、大型動物(ブタ)への細胞シート移植実験の予定であったが、計画を変更し平成25年度は小動物への移植治療効果判定に重点を置いたため、未使用額が生じた。細胞シートの大型化に必要な磁性体および培養に係る消耗品、さらにはブタへの移植実験を予定しており、未使用額はその経費に充てる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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