研究課題
若手研究(B)
本研究では、最近申請者が作製に成功したNRSF心筋特異的ノックアウトマウスをはじめ、NRSFとの複合体形成が知られる複数のヒストン修飾因子のノックアウトマウスの解析と、その詳細な比較検討を行い、NRSF転写抑制複合体の心筋形質維持に係わる分子機序とその破綻のメカニズムを、特にエピゲノム制御の観点から明らかにし、新規心治療標的探索を行う。NRSFストレートノックアウトマウスは胎生期に死亡するため、心筋でのNRSFの転写・エピゲノム制御における意義を検討するために、まず本年度申請者はNRSF floxマウスを用いて、心筋特異的、及び時期特異的にNRSFを欠失するNRSF conditionalノックアウトマウスを作製した。具体的には、NRSFloxp/lopxマウスを、心臓特異的なalphaMHC-CREマウスおよび、薬剤誘導性alphaMHC-MerCREMerマウスと交配し、得られたマウスを解析した。その結果、NRSFloxp/loxp; alphaMHC-creマウスは正常に生まれてくるが、生後約10週までに徐々に進行する心機能低下を伴い、心室性頻拍などの不整脈が多発し、最終的に突然死する結果を得た。またDNAマイクロアレイなどの解析結果から、NRSFloxp/loxp; alphaMHC-creマウスでは、dnNRSF-Tgと同様複数の心筋胎児型遺伝子の発現が亢進していることも確認した。またNRSFloxp/lopx; alphaMHC-MerCREMerマウスも作成し、タモキシフェンを投与し、生後6-8週令で心臓におけるNRSFの発現量が野生型の約70%まで低下したマウスを得た。現在このマウスの心機能、生存率など解析中である。また申請者はヒストン脱アセチル化酵素HDAC1/2およびヒストン脱メチル化酵素LSD1のfloxマウスを入手し、それぞれ心筋特異的CREマウスとの交配を開始した。
2: おおむね順調に進展している
NRSF floxマウスを用いて、心筋特異的、及び時期特異的にNRSFを欠失するNRSF conditionalノックアウトマウスの作製に成功し、その表現型の解析を開始した。具体的には、NRSFloxp/lopxマウスを、心臓特異的なalphaMHC-CREマウスおよび、薬剤誘導性alphaMHC-MerCREMerマウスと交配し、得られたマウスを解析した。その結果、NRSFloxp/loxp; alphaMHC-creマウスは正常に生まれてくるが、生後約10週までに徐々に進行する心機能低下を伴い、心室性頻拍などの不整脈が多発し、最終的に突然死する結果を得た。またDNAマイクロアレイなどの解析結果から、NRSFloxp/loxp; alphaMHC-creマウスでは、dnNRSF-Tgと同様複数の心筋胎児型遺伝子の発現が亢進していることも確認した。またNRSFloxp/lopx;alphaMHC-MerCREMerマウスも作成し、タモキシフェンを投与し、生後6-8週令で心臓におけるNRSFの発現量が野生型の約70%まで低下したマウスを得た。現在このマウスの心機能、生存率など解析中である。またはヒストン脱アセチル化酵素HDAC1/2およびヒストン脱メチル化酵素LSD1のfloxマウスを入手し、それぞれ心筋特異的CREマウスとの交配を開始しており、進捗状況はおおむね順調であると考える。
今後の研究は以下のように推進方策は以下のとおりである。1.NRSF conditionalノックアウトマウスにおける遺伝子転写・エピゲノム変化の解析。NRSF conditionalノックアウトマウスにおける上記解析を継続する。心筋特異的NRSFノックアウトマウスの解析の継続に加え、薬剤誘導性CREマウスを用いた時期特異的かつ心筋特異的NRSFノックアウトマウスの、心臓の各成熟過程、あるいは病的負荷時におけるNRSFの役割の解析を行っていきたい。2.LSD1 conditionalノックアウトマウスおよびHDAC1/2ダブルconditionalノックアウトマウスにおける遺伝子転写・エピゲノム変化の解析。心筋特異的HDAC1/2ダブルconditionalノックアウトマウスおよびLSD1 conditionalノックアウトマウスの作成を継続し、解析を開始する。特に先行しているHDAC1/2ダブルconditionalノックアウトマウスにおいては、alphaMHC-CREとの交配、解析に加え、薬剤誘導性CREマウスとの交配による、時期特異的conditionalノックアウトマウスの作製と解析を行う。3.NRSF複合体の機能を修飾する分子、および低分子化合物の同定・解析。エピゲノム制御におけるNRSFの機能、およびその修飾の分子機構を同定するために、yeat two-hybrid(Y2H)、NRSF依存性転写抑制活性を指標とするhigh throughput screening、またNRSFトランスジェニックを用いたtandem affinity purificationを行い、NRSFと複合体を形成したり、その転写・エピゲノム制御活性に影響を与えうる分子の新規同定の試みを開始したい。
進捗状況はほぼ予定通りであるが、試薬の購入において当初の予定より若干購入費が少なかったために、次年度使用額が生じた。次年度の研究遂行に必要な試薬購入費に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
PLoS One
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http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~med2/jpn/research/cardio.html