研究課題
若手研究(B)
心臓は常に自律拍動をするために莫大なエネルギーを消費している。心筋が虚血状態になると、エネルギーの供給と需要のバランスが崩れ心不全に陥る。しかし虚血時におけるエネルギーすなわちATPの供給制御メカニズムについては未だ解明されていない。 本研究では虚血におけるATP産生制御機構を解明するために、エネルギー飢餓により発現誘導される新規遺伝子AMFと相互作用する因子の同定・機能解析を行い、虚血において心筋細胞のATP産生とエネルギー代謝にAMFがどのように関わっているかを明らかにする。平成25年度では、心筋細胞を材料として独自のタンパク質精製方法を用いて、ミトコンドリアタンパク質AMFと相互作用する因子の探索・同定を試みた。その結果、新たにAMFと相互作用する因子としてFoF1-ATP合成酵素複合体を同定した。生化学的解析からFoF1-ATP合成酵素との相互作用を確認し、さらに精製したFoF1-ATP合成酵素を用いてAMFと直接相互作用することを明らかにした。我々が新たに確立した細胞内ATP濃度測定法を用いた実験ではAMFのノックダウンされた心筋細胞でミトコンドリア内のATP濃度が低下していることを見出した。またAMFノックダウン心筋細胞においてATP合成の低下に起因する酸素消費量の低下もみとめられた。さらにAMFを強制発現した心筋細胞では低酸素条件下でのATP濃度の低下が軽減されることを明らかにした。これらの結果からミトコンドリアタンパク質AMFはエネルギー飢餓状態において発現誘導されミトコンドリアでのATP合成を司るFoF1-ATP合成酵素と相互作用することにより、ATP合成を促進することが示唆される。以上の成果をProc.Natl.Acad.Sci.USA誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画の2項目、I) AMFの相互作用因子の同定・生化学的解析 およびII) AMFの心筋細胞におけるATP濃度およびエネルギー代謝への影響の検討 についてほぼ予定通り実験を進め、成果を発表することができた。
平成26年度では、平成25年度の成果をもとに研究材料を培養細胞からゼブラフィッシュに移し、当研究室で確立された心臓でのATP濃度測定系を用いてAMF遺伝子導入またはアンチセンスモルフォリノ導入個体での心臓のATP濃度変化についての検討を行う。その後研究実施計画に基づくイヌの虚血再灌流モデル、ヒトのミトコンドリア病患者サンプルを用いた検討を行う予定である。
計画が予想以上にすすみ、生体におけるAMFの作用を解析すべくゼブラフィッシュの特殊なラインを作成し解析することを年度末に計画していたが、ラインの作成が予想より時間がかかり、余剰金が発生した。AMFの解析に使用する特殊プローブを導入したゼブラフィッシュを作成し、AMFの生理機能解析を上記方策通り進める。
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The FASEB Journal
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http://www.medbio.med.osaka-u.ac.jp/