研究課題
若手研究(B)
制御性T細胞による動脈硬化病変形成抑制の分子機序の解明のために、薬剤投与によりFoxp3+ Tregを特異的に減少させることのできる動脈硬化モデルマウスを作製し、動脈硬化症の進展における内在性Foxp3+ Tregの役割および分子レベルでの抑制機序について検討を行った。Tregの減少により、動脈硬化病変のサイズには変化を認めなかった。Tregの減少した動脈硬化マウスでは、血液中のLDLコレステロール値の有意な低下を認め、動脈硬化抑制的に作用したのではないかと推測される。動脈硬化モデルマウスにUVB (ultraviolet B)の波長の紫外線照射を行うことにより、Foxp3+ Tregの誘導とともに有意な動脈硬化形成の抑制を認めた。Tregが減少した動脈硬化マウスでは、UVB照射による動脈硬化抑制効果は打ち消され、その抑制機序としてTregの誘導が必須であることが示唆された。さらに、薬剤投与により皮膚Langerin陽性樹状細胞を特異的に除去できる易動脈硬化マウスを作製し、解析を行った。このマウスでは、UVB照射によるTregの増加および動脈硬化抑制効果は消失する傾向を認めた。抗CD3 抗体投与を行うことにより動脈硬化退縮が得られたが、その機序としてTregの誘導が必須であることが示され、論文として報告した。アンジオテンシンII誘導性マウス大動脈瘤モデルを用いて、IL-2/IL-2抗体複合体投与の動脈瘤形成への影響について検討した。IL-2/IL-2抗体複合体投与群では、リンパ組織および動脈瘤組織でのFoxp3+ Tregの増加を認め、大動脈瘤発症率・死亡率は有意に低下した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね研究計画通りに進んでいる。
制御性T細胞による動脈硬化病変形成抑制の分子機序の解明については、Treg減少動脈硬化マウスを用いて、Tregが脂質代謝に与える影響についてさらなる検討を行う。また、他の動脈硬化モデルマウスにおいても同様の検討を行い、Tregの減少による影響が、マウスのバックグラウンドによらない普遍的なものであるのかどうかを検討する。皮膚免疫細胞の機能修飾を介した制御性T細胞の誘導による新規動脈硬化治療法の開発については、皮膚Langerin陽性樹状細胞を特異的に除去できる易動脈硬化マウスを用いて、UVB照射による動脈硬化抑制機序の解明を行う。大動脈瘤形成における制御性T細胞の果たす役割の検討については、IL-2/IL-2抗体複合体投与による大動脈瘤形成抑制の機序について検討する。
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Cardiovascular Research
巻: 102 ページ: 107, 117
10.1093/cvr/cvu002.