心臓はエネルギー基質の 70-90%を脂肪酸で賄っているが、心不全になるとβ酸化や脂肪酸利用が減少し、エネルギーが供給されなくなることにより心不全がさらに増悪する。本研究ではヒト心不全の血液についてガスクロマトグラフィー質量分析計を用いてメタボローム解析を行ったところ、ある種の脂肪酸が心不全の重症度と相関して増加していることが判明した。ヒトにおいて血液中の遊離脂肪酸濃度と心不全における致死性不整脈の発現との関連を示唆する報告がなされている一方、動物実験においては血中の脂肪酸濃度の上昇が心保護的に作用することが近年、報告されている。我々も高比重リポ蛋白(HDL)の代謝酵素である血管内皮リパーゼ(EL)がHDLに含まれるリン脂質を分解して心臓に脂肪酸を供給し、心不全の病態を制御していることを証明した。引き続き、心不全において血中の脂肪酸が上昇する機序と病態における役割について培養心筋細胞および心不全マウスモデルを用いて検討を行っている。
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