研究課題
本年度はまず、2型糖尿病心筋においてAMP deaminase(AMPD)活性が亢進する分子機序について検討した。ラット心筋における主要なアイソフォームであるAMPD3の発現は、mRNAおよび蛋白レベルにおいて、2型糖尿病モデルラットOLETFと正常対照ラットLETOに差を認めなかった。心筋AMPD活性は発現量以外にも、至適pH、ATP、ADP、NADHおよびPKCによるリン酸化により上昇し、無機リン酸およびGTPによって抑制されることが報告されているため(Hohl et al. Mol Cell Biochem 1999)、これら活性制御因子の変化について検討した。まず、糖尿病心筋で報告されているPKC活性上昇の関与について検討したが、PKC阻害剤の前処置によるin vitro assayではAMPD活性の低下は認められなかった。次に、糖尿病モデルマウスの肝臓においてAMPD活性が亢進しており、その機序として細胞質無機リン酸の低下が関与するという報告(Cicerchi et al. FASEB J 2014)から、心筋無機リン酸含有量も測定したが、OLETFとLETOに差を認めなかった。以上の結果から、2型糖尿病心筋のAMPD活性は、その発現量ではなく、翻訳後修飾や未知の活性制御因子の関与により亢進していることが示唆された。糖尿病心筋にて上昇したAMPD活性への介入効果に関しては、現時点で活性制御機構が同定できなかったため、発現抑制による介入を試みた。予備実験にて、新生児ラット単離心筋細胞およびH9c2細胞において、siRNAによるAMPD3のノックダウンが可能であることをRT-PCRで確認したが、in vivo-jetPEI(Polyplus transfection)を用いたsiRNAの導入は現時点で達成できていない。
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J Mol Cell Cardiol
巻: 80 ページ: 136-145
10.1016/j.yjmcc.2015.01.004