研究課題/領域番号 |
25860614
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
市川 泰広 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10555121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動脈瘤 / EP4 / 弾性線維 / 血管平滑筋 |
研究概要 |
EP4の過大発現の確認を細胞レベルで検討した。血管平滑筋特異的EP4 過大発現マウスとコントロールマウスの大動脈を採取し、血管平滑筋の初代培養を行った、EP4の下流のシグナルのcAMPの上昇を過大発現群とそうでない群で比較すると過大発現群で有意にcAMPの上昇がみられた。これはEP4が過大発現していることを示している結果である。 次に平滑筋特異的EP4 過大発現マウスの血管を用いて、EP4 シグナルが血管弾性に与える影響を検討した。まず、血管の弾性を測定した。なにも薬剤を投与しない状態では、血管弾性は変化しなかったが、動脈硬化・動脈瘤を起こす薬剤として知られているアンギオテンシンIIを4週間投与したモデルでは、EP4過大発現マウスではそうでないマウスと比べて有意に血管径が拡張し、血管弾性が低下した。 血管弾性が低下している原因を検討するために、血管組織のMMP活性をゼラチンザイモグラフィーを用いて測定した。アンギオテンシンIIを投与した状態ではEP4過大発現マウスのほうが有意にMMP-2,MMP-9の活性が上昇していた。 さらに代表的な炎症性サイトカインであるIL-6の濃度をELISAを用いて測定すると、アンギオテンシンIIを投与した状態ではEP4過大発現マウスのほうが有意にIL-6の濃度が上昇していた。 以上の結果より、EP4過大発現マウスでは弾性線維を分解する酵素であるMMPの活性の亢進や炎症性サイトカインの濃度上昇を介して弾性線維の分解を促進していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過大発現マウスの過大発現が確認できた。 弾性線維の分解に関しての結果が出ている。 以上より研究は順調に推移していると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
EP4 が弾性線維形成を抑制することを細胞レベルで検討する。生体内は複数の要素が混在しており、EP4 受容体は血管平滑筋だけでなくさまざまな臓器に存在するため、直接の因果関係として結論できない可能性があるため、はじめに細胞レベルの検討を行う。血管平滑筋特異的EP4 過大発現マウスとコントロールマウスの大動脈を採取し、血管平滑筋の初代培養を行う。酵素処理後、血管外膜を除去し中膜をexplant 法で行う培養方法は確立している(Kobayashi, Hypertension 2012)。EP4 が過大発現していることをRT-PCR で確認したのちに実験を行う。具体的には2 種類のマウス由来の平滑筋細胞にEP4 刺激剤を加えた群と加えない群にわけて、弾性線維を構成している分子(エラスチン、リシルオキシダーゼ、フィブリリン)の遺伝子レベル、タンパクレベルの発現量をRT-PCR、ウエスタンブロット法を用いて測定する。血管平滑筋特異的EP4 過大発現マウスで遺伝子レベルあるいはタンパクレベルで弾性線維関連分子の発現の低下が予想される。 さらに、アデノウイルスを用いてEP4 を過大発現させたマウス平滑筋細胞でも弾性線維関連分子の発現の低下が生じるかも検討し、EP4 過大発現マウスを使用した実験結果が正しいことを確認する。
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