研究課題/領域番号 |
25860621
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西山 崇比古 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20464844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 長鎖non coding RNA |
研究概要 |
本研究では、non coding RNAの中でもまだ機能が十分に解明されていないlinc RNAに着目している。かつては意味のない配列と考えられていたnon coding RNAであるが、今では転写制御に関する重要な機能を持つことがわかってきている。今までにも、心臓発生では心筋特異的microRNAの解析が進んでおり、心臓で高発現するmiR-1, miR-133の欠損マウスでは心臓発生異常が確認されている。また、miR-1過剰発現ES細胞は心筋分化効率が向上することが知られており、non coding RNAが心筋分化に必須であり、更に分化促進作用があることが判明している。ヒストン修飾に関わる脱アセチル化も欠損することで、心臓発生異常を示すことがわかっておりエピジェネティックな転写制御機構も正確な心臓発生には欠かせない生物学的機構と考えられる。 循環器領域では未だlinc RNAの作用機序に関する具体的な報告はなく、linc RNAに共通して認められるクロマチン修飾によるエピジェネティック転写制御を心臓発生、心筋分化誘導過程ではじめて解明することを目標としており、循環器領域の中ではきわめて独自性の高い研究となる。 心筋分化誘導の最終的な応用は今後の再生医療の臨床応用である。現在はiPS細胞からの心筋誘導、心臓線維芽細胞からの直接的心筋分化誘導が確立している。更に臨床応用に十分な誘導効率を得るためにはnon coding RNAによるエピジェネティック転写制御機構は大きな可能性を持つ分野の一つである。より効率的な心筋分化効率を開発することは将来の心筋再生医療への発展につながる有用な研究である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓発生と心筋分化誘導下において必要なlinc RNAを同定するために、マウス胎児10.5日、出生後1日、成獣から心臓を摘出しRNAを抽出した。また、ES細胞から心筋分化誘導し作製した心筋細胞と未分化状態のES細胞からそれぞれRNAを抽出した。コントロールとしてマウス胎児線維芽細胞(MEF)を用い発現量を比較し、心臓発生の各ステージ、またES細胞株で心筋分化誘導では、αMHCの発現量が上昇しており、サンプルがマイクロアレイ解析に妥当である事を確認した。現在までに報告されているlincRNAの発現量を網羅的に解析するために、マイクロアレイを用いて心筋分化に必要なlincRNAを同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
同定した心筋特異的linc RNAに対する特異的抗体を用いて、転写因子や結合タンパク質の同定、DNAとの相互作用やヒストン修飾のゲノム上での局在を同定する。心臓発生における作用を調べるために、マウス胎児E10.5, 出生後1日,成獣の心臓からサンプルを解析する。ここでは、クロマチン修飾に関わる因子との結合に着目する予定である。ヒストンの翻訳後修飾は様々な細胞機能制御に重要な役割を果たすと考えられるが、遺伝子の発現やクロマチン構造の制御には特定のリジン残基のアセチル化、メチル化、ユビキチン化が深く関わっている。特にヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化は、遺伝子の発現抑制やゲノムの安定性に関わるヘテロクロマチンの維持に重要であると考えられているためメチル化酵素、脱メチル化酵素、複合タンパク質との相互作用に重点をおいて解析する。免疫クロマチン沈降のみでヒストン修飾因子が同定できない場合には、次世代シークエンサーを状況に応じて用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
心臓発生における作用を調べるために、マウス胎児E10.5, 出生後1日,成獣の心臓からサンプルを解析する。ここでは、クロマチン修飾に関わる因子との結合に着目する予定である。ヒストンの翻訳後修飾は様々な細胞機能制御に重要な役割を果たすと考えられるが、遺伝子の発現やクロマチン構造の制御には特定のリジン残基のアセチル化、メチル化、ユビキチン化が深く関わっている。特にヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化は、遺伝子の発現抑制やゲノムの安定性に関わるヘテロクロマチンの維持に重要であると考えられているためメチル化酵素、脱メチル化酵素、複合タンパク質との相互作用に重点をおいて解析する必要があったため。また免疫クロマチン沈降のみでヒストン修飾因子が同定できない場合には、次世代シークエンサーを状況に応じて用いることが予想されたため。 心筋特異的lincRNAの結合因子の同定と心筋直接誘導法への応用を目指している。 心筋特異的linc RNAの標的遺伝子をRNA免疫沈降法を用いて同定し、エピジェネティックな機構を中心に機能解析をすすめる。また、心臓線維芽細胞から心筋細胞直接誘導を行う技術と組み合わせ、心筋分化促進方向にエピジェネティック制御機構を誘導を試みる。最終的に心筋特異的linc RNAを用いて心筋再生効率の上昇を目指す。
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