研究課題
若手研究(B)
(1) 心筋特異的なeIF2αのリン酸化シグナル活性化する遺伝子組み換えマウスの作成:eIF2αリン酸化シグナルを活性化させるFv2E-PERKキメラ蛋白を心筋特異的に発現するαMHC(α-Myosin heavy chain)プロモーターの下流につないだTgマウスを作製し、eIF2αリン酸化シグナルの心臓特異的なgain-of-funtionモデルを樹立に成功した。(2) eIF2αリン酸化シグナルの病態生理学的意義の検討:1、eIF2aリン酸化シグナルの中等度の活性化モデルマウス;今回作製したαMHC-Fv2E-PERK Tg マウスに短期間で少量のAP20187を投与してeIF2αを中等度活性化させる。eIFα;を中等度活性化させたマウスは、ランゲンドルフ虚血再灌流モデルや、in vivoでの虚血再灌流傷害モデルで虚血抵抗性を示した。2、eIF2αリン酸化シグナルの強度の活性化今回作製したαMHC-Fv2E-PERK Tg マウスに長期間で大量のAP20187を投与してeIF2αを強く活性化させる。マウスにAP20187を3日間連続で投与すると、マウスの心機能は正常の1/5程度(心収縮率15%程度)まで低下し、ほぼ全例が心収縮低下で死亡した。しかし、AP20187を2日間連続で投与すると、一過性に心収縮は低下(心収縮率25%程度まで)するものの、10-14日目には正常の心機能に改善した。この現象は臨床的には途絶心筋と同様の経過を示した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画にのっとり、順調にすすんでいる。ターゲット因子(eif2α)を心筋特異的にトランスジェニックしたマウスも作成が完了し、その後の薬剤投与に対する表現型も確認できている。当初の研究の目的にそった研究となっている
当初の研究計画の通り、研究を遂行する。次年度の目標はeif2αの活性化の下流のメカニズムの解明を中心とする。虚血再灌流傷害から心筋プレコンディショニングに至る連続した病態の網羅的な解明をメインとする。(1) eif2αの中等度の活性化に伴う虚血再灌流障害抵抗性獲得のメカニズムの解析:A) 虚血再灌流傷害に抵抗性をしめした心臓のサンプルを用いてCapillary electrophoresis-mass spectrometry (CE-MS) を使ってメタボローム解析とフラクソーム解析(13C-glucoseから始まる代謝の流れをトレースする)を行い心筋エネルギー代謝経路の変化を観察する。B)Microarray法による網羅的な遺伝子解析を行い、eif2αの活性化に伴う発現遺伝子の変化を解析する。共同研究者の親泊先生らと共同し、eif2αの活性化に伴う遺伝子発現の変化を心臓以外のモデルと比較検討し、心臓で特異的な変化を検証する。(2) eif2αの高度の活性化に伴う心機能の一過性の低下を誘導するメカニズムの検討:A)カルシウム動態の変化を検討する。ランゲンドルフ潅流モデルを用いて心筋を単離、カルシウムトランジエント測定等の細胞内カルシウム動態を検討する。B)電子顕微鏡等を用いて、心筋の形態、ミトコンドリアの形態、細胞内器官の形態を確認する。C)Maicroarryによる網羅的な遺伝子解析を行い、eif2αの活性化に伴う発現遺伝子の変化を解析する。eif2αの活性化と心筋収縮不全をつなぐ因子としてのmiRNAなどの関与を検討する。(3) 創薬法的分子の同定:eIF2αリン酸化シグナルの活性化を引き起こす上流のシグナル伝達経路を解析して、eIF2αリン酸化シグナルを制御し最適なストレス応答状態を獲得できる創薬標的分子の同定を試みる。
遺伝子改変マウスがマウス室の感染により使用不可能となり、25年度に計画していた実験の一部を遂行するのが困難であったため。現在、マウス小屋の感染コントロールは良好となり、スムーズに実験を行えている状況である。そのため、前年度に達成できなかった、遺伝子改変マウスの解析を実験計画に従い遂行する。
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