研究課題/領域番号 |
25860623
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小平 真幸 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70464865)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | iPS細胞を用いた疾患解析 / ミトコンドリア病 |
研究概要 |
ミトコンドリア脳筋症は脳、筋肉、心臓など多臓器において機能異常をきたす全身疾患であるが、現時点では有効性が証明された治療法はない。本研究はiPS細胞を用いてミトコンドリア脳筋症の病態解明さらにはドラッグスクリーニングをおこない難治性疾患であるミトコンドリア脳筋症の治療薬開発を目的とする。 ミトコンドリア病(MELAS)および健常人からiPS細胞樹立を開始して、20ライン樹立することに成功した。MELASの患者の皮膚生検をおこない皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞は①免疫染色(Oct3/4、Nanog、SSEA3・4、TRA1-60・81の未分化マーカーの発現の確認)②RT-PCR法(Oct3/4、Nanog、REX1などの未分化マーカーの発現の確認)で未分化性を証明し、③奇形腫形成能の確認(SCIDマウスへの移植実験)で多分化能が示された。それぞれのラインについて継代数20の段階でDNAを抽出し、Real time PCR法を用いてそれぞれのミトコンドリアDNAの変異率を解析した。MELAS由来のiPS細胞の変異率は4%から99%まで幅広く分布していた。iPS細胞から分化したfibroblastの変異率および呼吸機能を解析した。分化したfibroblastおよび心筋細胞の変異率はiPS細胞の変異率が維持されていた。MELASのiPSから分化したfibroblastの呼吸機能をspectrometerを用い解析したが、複合体Iでの機能低下が顕著であり、臨床でのこれまでの報告された病態と一致していた。iPS細胞を用いてMELASの病態モデルを構築することに成功した。この病態モデルを用いて今後の治療薬開発および病態解明を進めていく方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MELAS患者由来のiPS細胞からfibroblastに安定して分化誘導させる系を構築することには成功したが心筋細胞へ安定して分化させることに難渋している。それに伴いミトコンドリア病iPS細胞由来心筋細胞の解析(細胞構造解析、電気生理学的解析)をおこなうことができていない。またMELAS由来の心筋細胞を用いたドラッグスクリーニングについても計画通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞からfibroblastおよび心筋細胞へ分化させる際に各種薬剤を濃度を添加する。これらの分化細胞を薬剤を添加しなかったコントロール群と比較して変異率、ミトコンドリア呼吸機能、心筋の収縮能を解析する。薬剤としては、まずこれまでにミトコンドリア病に対して効果が期待されて使用されてきたN-アセチルシステイン、コエンザイムQ10、ビタミンB2、イデベノン、レベラトロールについて効果を再検証する。薬剤を加えて呼吸機能の改善を認めた分化fibroblastおよび心筋細胞のROS、autophagy、MPTを測定し、如何にして呼吸機能改善が得られたか探りメカニズムについても解析することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は平成25年度に予定していたミトコンドリア病iPS細胞由来心筋細胞および健常人iPS細胞由来心筋細胞の解析を平成26年度に行うことになったため。 MELAS由来のiPS細胞から分化させた心筋細胞についての細胞構造解析(電子顕微鏡で心筋細胞のサルコメア、Z帯を含む構造の観察)
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