研究課題
メタボリック症候群およびその根幹をなす内臓脂肪の一部である心房周囲脂肪の増加と心房細動の進行との関連性が示唆されている。本研究では、心房細動とこれらのリスク要因との関連性を明らかにすることを目的に、動物実験ならびに臨床研究を行った。動物実験:育成期に高脂肪食を給餌したブタは通常食を給餌したブタと比較し、体重増加がわずかであったものの明らかな高脂血症を呈しており、左房圧が高い傾向を呈した。電気生理学的には肺静脈の不応期が短縮し、刺激により誘発された心房細動の持続時間が有意に延長していた。しかしながら、心房の線維化、肥大などの構造的リモデリングを示唆する所見は認めなかった。以上より、この変化は肥満やメタボリック症候群での心房細動発症における初期の電気的リモデリングを示している可能性が示唆された。臨床実験:心房細動患者において、心房周囲脂肪の接する心房壁に電気的な異常興奮部位が存在していると報告されている。また、心房周囲脂肪内には心房細動の発症維持に関連する心臓神経叢(ganglionated plexi:GP)が存在している。そこで、心房周囲脂肪に近接する心房壁へのカテーテルアブレーションが、心房細動の発症抑制に効果があるか否かを検討した。持続性心房細動患者60例において術前にCTを施行し、肺静脈隔離後、三次元マッピング上に描出した心房周囲脂肪に接する心房壁への焼灼を追加した。観察期間中央値16ヶ月で78%の患者で心房細動の再発は認めなかった。肺静脈隔離後、心房内の分裂電位や線状焼灼を主軸とした従来の左房焼灼の方法での心房細動の非再発率は60%であり、本法は持続性心房細動患者の有効な治療法になり得ると考えられた。この結果は、心房周囲脂肪と心房細動の維持との関連性を支持する所見と考えられる。現在、本アブレーション法のGPへの影響に関して調査している。
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