研究課題
目的:アレルギー喘息など気道炎症下では、炎症性細胞の集積、解糖系の亢進による乳酸産生増加によって気道の酸性化(低pH)が伴う事が知られている。しかし、pH環境とこれらの疾患の病態生理との関連は不明である。本研究では、我々が発見した細胞外pHを感知するプロトン感知性G蛋白共役受容体がpH微小環境のセンサーとして喘息の発症、進展に関与しているという仮説を実証するため、作成した受容体欠損マウスを用いた喘息モデル実験や気道炎症細胞の中でも特にリンパ球にフォーカスしたpH作用機構の解析をおこなう。OGR1ファミリーは炎症性細胞に発現していることがわかり、特に主要な抗原提示細胞である樹状細胞にもOGR1が多く発現している。我々はすでに保持しているOGR1受容体欠損マウスの気管支喘息モデルを作製し、気道炎症、メサコリンに対する気道過敏性へ影響を調べた。この結果、これまでにOGR1欠損マウスで気道炎症抑制、気道過敏性の減弱を認めることを発表した。しかしながら、OGR1の気管支喘息における各免疫担当細胞の役割についての詳細は明らかになっていない。そこで、炎症の中心的役割を果たしていると考えられている樹状細胞におけるOGR1の役割について解析する。
2: おおむね順調に進展している
OGR1ファミリー欠損マウスの骨髄から単球を採取し、GM-CSF,IL-4存在下で培養し作成した骨髄由来樹状細胞の抗原の取り込み能、抗原取り込み後の表面マーカーの変化、pH低下時の表面マーカーの変化などを野生型マウス骨髄由来樹状細胞と比較した。さらにin vivo, in vitroにおける樹状細胞の遊走能についても解析を行った。
樹状細胞の遊走能について、野生型と比較してOGR1ファミリー欠損マウスでは低下を認めたが、その後の抗原提示能、共因子の表出の差異についても解析を行う。さらにはpH低下時に樹状細胞が産生するサイトカインがどのように変化するのをELISA法にて確認する予定である。
プロトンと樹状細胞、リンパ球の関連性についてmRNAレベルでの受容体、表面マーカーの解析を進めていたが、mRNAだけではなく、タンパク質レベルでの解析を行うためのELISA方により研究を進めることが重要であり、有意であることが判明したため、一部研究計画を変更したことで未使用額が生じました。
ELISA方による実験のために必要な抗体を購入する予定です。さらにフローサイトメトリー法の解析も計画しています。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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