研究課題
最近、アポトーシス促進分子であるBIMをコードする遺伝子に特定の多型を有するEGFR変異肺がんはEGFR-TKIによるアポトーシスに抵抗性を示すことが明らかになった。このBIM遺伝子多型を有すると不活性型BIM が高率に発現し、活性型BIMの発現が低下してアポトーシス誘導能が減弱する。さらに臨床検体を用いた解析で、臨床的にも耐性因子として重要であることが示唆されている。本研究ではこのBIM遺伝子多型に起因するEGFR-TKI耐性を克服することを目的として以下の成果を上げた。1)日本人の肺腺癌症例から樹立された細胞株PC-3がBIM遺伝子多型をヘテロ接合型で有することを新たに見出し、EGFR-TKIによるアポトーシス誘導に抵抗性を示すことを明らかにした。2)PC-3細胞を用いたin vitroの検討で、HDAC阻害薬であるvorinostatをEGFR-TKIであるgefitinibに併用すると、活性型BIMの発現が促進され、アポトーシスが誘導されることを明らかにした。3)PC-3細胞を用いたマウス皮下移植モデルにおいて、gefitinib単剤の投与では腫瘍体積は減少せず、ボリノスタットを併用すると顕著な腫瘍縮小効果を認めた。腫瘍を採取してウエスタンブロット法、TUNEL染色法で検討したところ、vorinostat併用により活性型BIMの発現が上昇し、アポトーシスが誘導されていることが明らかになった。以上の結果から、BIM遺伝子多型に起因するEGFR-TKI耐性をvorinostat併用で克服できる可能性が示唆された。得られた結果を基に、BIM遺伝子多型を有するEGFR変異肺がんを対象としたgefitinibとvorinostat併用の第Ⅰ相臨床試験を医師主導治験として実施している(ClinicalTrials.gov:NCT02151721)。
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