研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、(1)既存の肺組織および気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いて網羅的なマイクロRNA解析を行い、特発性肺線維症に疾患特異的なマイクロRNAを同定する、(2)急性増悪患者の血液検体、BALF検体を前向きに集積し、急性増悪に特異的なマイクロRNAを同定することである。まず既存の慢性間質性肺炎の肺組織、BAL検体のうち、特発性肺線維症と抗ARS抗体症候群に伴う間質性肺炎を対象にメッセンジャーRNAレベルでの遺伝子発現の網羅的解析に取り組んだ。RNA解析が可能なかたちで保存された既存検体からRNAを抽出し、品質確認を行ったうえで、遺伝子発現の網羅的な解析に着手した。最終的な解析結果は確定されていないが、特発性肺線維症では細胞の増殖に関連した遺伝子が、抗ARS抗体症候群ではTリンパ球に関連した遺伝子がそれぞれ発現亢進している可能性が高く、この2群の異なる臨床像の機序と考えられた。引き続き、同検体を用いて候補遺伝子の発現を定量的に評価し、肺組織での蛋白発現の相違を検討する。さらに同様の検体を用いて、マイクロRNAの網羅的解析に着手するとともに、解析対象に肺癌患者の切除肺非癌部分組織を加えることで、特発性肺繊維症により特異的な遺伝子発現およびマイクロRNA発現を明らかにする。急性増悪患者を対象とした血液検体、BALF検体の前向きな集積にも取り組み、急性増悪における病態特異的なマイクロRNAの同定を目指す。
3: やや遅れている
まず既存の肺組織、BALFを用いたマイクロアレイ解析に着手したが、既存検体からのRNA抽出とその品質確認、ならびに解析ソフトの習熟に時間を要し、メッセンジャーRNAレベルでの遺伝子発現の網羅的解析に到達するまでに留まった。このため、保存検体を用いたマイクロRNAの抽出、網羅的な発現解析には至らず、急性増悪患者を対象とした前向きの検体集積も滞っている。
既存の肺組織、BALFを用いた、肺組織特発性肺線維症および抗ARS抗体症候群における遺伝子発現の網羅的解析を進め、この2群の異なる臨床像に関連した候補遺伝子を同定する。引き続き、候補遺伝子の発現を定量的に評価し、肺組織での蛋白発現の相違も検討する。また同様の検体を用いて、マイクロRNAの網羅的解析に着手するとともに、解析対象に肺癌患者の切除肺非癌部分組織を加えることで、特発性肺繊維症により特異的な遺伝子発現およびマイクロRNA発現を明らかにする。2014年度より急性増悪患者を対象とした血液検体、BALF検体の前向きな集積にも本格的に着手し、急性増悪における病態特異的なマイクロRNAの同定を目指す。
2013年度に予定していた遺伝子解析実験のうち、既存検体を用いたメッセンジャーRNAの発現解析は行ったが、既存検体からのマイクロRNA抽出およびその網羅的な発現解析は行うことができなかった。2013年度に行うことのできなかった既存検体からのマイクロRNA抽出およびその網羅的な発現解析は行うとともに、当初の計画どおり、急性増悪患者の検体を前向きに集積し、マイクロRNAの抽出および網羅的解析を行う。これらの結果を国内外の学会で発表し、英文校閲を経て、査読のある英文誌に投稿する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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