研究実績の概要 |
IPF患者65名と健常コントロール81名を対象とした検討ではIPF患者の血清sRAGE濃度は健常コントロール群と比較して有意に低下していた。ROC曲線を用いて算出した前述のカットオフを使用し、Kaplan-Meier曲線を用いて検討したところ、sRAGE低値群は高値群に比べて有意に予後不良であった。コックスハザードモデルを用いてIPFの予後と相関する因子を検討したところBMI, %VC, %DLCO, ステロイド単独療法もしくはステロイド+免疫抑制薬の併用療法の使用, KL-6, sRAGE で有意な相関を認めた。さらに多変量解析を用いて年齢、性別、BMI、喫煙歴 (pack years)、ステロイド単独療法もしくはステロイド+免疫抑制薬の併用療法の有無について補正をおこなった上でも、%VC, %DLCO , KL-6, sRAGE は予後と有意な相関を認めた。IPF患者における初診時の肺機能および経年的肺機能低下と血清sRAGE値とは有意な相関を認めなかった。次に血清RAGE値と2年間の急性増悪発症をKaplan-Meier曲線を用いて検討したところ、RAGE低値群は高値群に比べて有意に急性増悪を多く発症していた。RAGEのSNPについてはCOPDで多くの報告がなされているrs2060700について検討をおこなった。rs2060700のSNPは血中sRAGE値との相関をみとめたがIPFの疾患感受性や予後との相関を認めなかった。 さらに血中HMGB1についての検討を進めた。IPF患者における血中HMGB1はコントロール群と比較して有意に上昇していた。IPF患者における血中HMGB1高値は予後不良と関連しており、また経年的%VC低下の予測因子であった。 このように血中sRAGEの低下とそのリガンドであるHMGB1の上昇はIPFの病態と関連していることが示された。
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