研究課題
若手研究(B)
我々は、本プロジェクトにおいて間質性肺疾患の新規血清マーカー開発を行っている。これまでに、我々は血清中HSP47が、病理学的にDADをきたす疾患にて特異的に上昇することを明らかにしてきた。以下具体的に成果を述べる。①血清中HSP47は特発性間質性肺炎のうち急性間質性肺炎で特異的に上昇がみられた。急性間質性肺炎とその他の間質性肺炎とを感度100%、特異度98.5%で鑑別することができた。②血清中HSP47は特発性肺線維症の安定期には上昇がみられないが、急性増悪時には早期から著明上昇を示すことが明らかとなった。一方では細菌性肺炎や心不全では上昇がみられないことも同時に明らかとなった。特発性肺線維症の急性増悪時には細菌性肺炎や急性心不全の鑑別が極めて重要であるが、その鑑別のための非侵襲的マーカーとして有用であることが示された。③薬剤性肺炎のうち、diffuse alveolar damage (DAD) patternにおいて特異的に上昇がみられることが明らかとなった。上記3病態の早期診断や鑑別において、血清中HSP47は既存の間質性肺炎マーカーであるKL-6, SP-A, SP-Dよりも優れていた。これらのデータは、血清中HSP47が、病理学的にDADをきたす疾患にて特異的に上昇することを示しているが、病理学的にDADをきたす疾患には、上記疾患だけでなく、敗血症に伴う急性呼吸窮迫症候群など多岐にわたる。急性呼吸窮症候群は急速に進行ししばしば致死的となるため、その早期診断は重要である。種々の疾患にて血清中HSP47が有用なマーカーとなるポテンシャルを持っていることが明らかとなり、今後更にその解明をしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標である間質性肺疾患の新規血清マーカー開発に関しては、上記「研究実績の概要」で述べたように、目標は達成しつつある。当初2年計画で行ってきた上記目標については最初の1年間でほぼ達成しつつあるため、予定以上に進展していると判断できる。一方では、間質性肺疾患の「HSP47をターゲットとした革新的治療法確立」に関しては、予定よりも若干遅れている。従って、トータルで考えるとおおむね順調に進展していると判断できる。
現在までに血清中HSP47が間質性肺疾患の新規血清マーカーとして有用であることを示してきたが、今後は更に対象疾患を広げ各種間質性肺疾患の鑑別診断、活動性把握、予後予測を臨床応用可能とするため、症例数を大幅に増やしHSP47発現動態の詳細な解析を行う。また、肺へ選択的にHSP47 siRNAを送達することのできる肺指向性遺伝子ベクター(ナノボール)を用いた肺組織局所におけるHSP47発現制御法を確立する。更にブレオマイシン肺線維症モデルや急性肺損傷モデルマウスにおける治療実験を行い、線維化抑制効果について解析する。
間質性肺疾患新規血清マーカー開発の研究は予定よりも順調に進展しているが、一方新規治療法開発の方は若干遅れている。当初の予定と若干のずれが生じているために、若干の次年度使用額が生じた。次年度は予定とのずれを修正し、スケジュール通りに研究が進展するようにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
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