研究概要 |
本研究はサルコイドーシスにおける肉芽腫形成に関する修飾因子の検討を行うものである。過去の論文やこれまで我々が行ってきた前研究の結果からHMGB1に着目し、まずはサルコイドーシス(n=72)と健常者(n=15)の血清および気管支肺胞洗浄液中(以下BALF)のHMGB1値をELISA法にて測定し比較検討した。結果、BALF中のHMGB1値は健常人に比較しサルコイドーシス患者で有意に上昇していた。しかし一方で血清中HMGB1値はサルコイドーシス群と健常者では有意な差はみられなかった。これはHMGB1が全身反応として上昇していると考えるより、局所において何らかの役割を持って上昇している可能性があると考得られる。また、HMGB1のレセプターの1つであるRAGEについても同様にELISA法で検討したところ、血清中HMGB1もBALF中HMGB1もともに両群で有意な差は得られなかった。この解釈については今回ELISAで測定したRAGEは活性を持つ可溶性RAGEと相関しないとの報告もあり、今後可溶性RAGEを測定し再検討する必要があると考えている。 上記にてサルコイドーシスにHMGB1が高値であることからその機能や発現細胞を同定し役割を解明すべく、サルコイドーシス患者の肺VATS組織を用い、免疫染色を行った。サルコイドーシスの肺組織においてHMBG1が肉芽腫周囲のリンパ球、マクロファージなど単核球系やII型肺胞上皮細胞などに発現していることを確認した。現在、発現細胞をより明確にすべくCD3,CD20,SP-Aなどとの二重染色を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている免疫染色を引き続き行い、HMGB1の発現細胞を同定しその機能について検討する。また更に検体数を増やしHMGB1、RAGE(可溶性RAGEも検討)、その他各種メディエーターなどをELISA法で測定し、患者の臨床データと相関を調べることによりサルコイドーシスにおけるHMGB1の役割について解明する。 更に当初の予定どおりPropionibacterium acnes誘発肺肉芽腫モデルにおける動物を用いた研究を実施する。 具体的にはATCC標準株のPropionibacterium acnes加熱死菌でウサギの皮下に前感作後,再度経静脈的にPropionibacterium acnesを経静脈的に投与することで,肺内の病変形成を誘導し,HMGB1組換え蛋白を投与開始3日前から連日、1) 経静脈的と2) 経腹腔的(それぞれ0.1 mg/day)に投与する。Propionibacterium acnesを経静脈的投与後、day1, day3, day7, day14, day28にウサギを安楽死させ、肺組織におけるHMGB1, MCP-1,INF-γのタンパク発現をウェスタンブロット法にて行い、デンシトメトリー解析をする。またHMGB1, MCP-1,INF-γのmRNA発現をReal-time PCRにて測定する。更に各群の経時的な病変形成の推移を、肉芽腫1個あたりの平均面積、単位面積当たりの肉芽腫の個数により、定量的に評価する。加えて上記のPropionibacterium acnes誘発肺肉芽腫モデルにおいて、Propionibacterium acnesを経静脈的投与後に抗HMGB1中和抗体(0.2 mg/回)をday-3, 0, 4, 8, 12に腹腔内に投与し、上記と同様にHMGB1, MCP-1,INF-γの測定、肺肉芽腫の評価を行う。
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