市販されている健常者由来の肺線維芽細胞 (Normal adult human lung fibroblasts: NHLF)およびCOPD患者由来の肺線維芽細胞 (Diseased human lung fibroblasts from patients with COPD: DHLF-COPD)を使用し、27-hydroxycholesterol (27-OHC)刺激によるmatrix metalloproteinases (MMPs)産生亢進に差が見られるか検討を行った。1nM~1microMの27-OHCで刺激し、gelatin zymographyを用いてMMP-2およびMMP-9の産生につき検討を行った。いずれの細胞でも濃度依存性にMMPsの産生亢進を認めたが、DHLF-COPDではNHLFに比べて、active MMP-2およびactive MMP-9の産生が1.2~1.3倍高いという結果であった。この結果から、COPD患者の気道では健常者の気道よりも27-OHCによるMMPs産生が亢進している可能性が示唆された。27-OHC刺激によるアポトーシス誘導についてもMTT assayを用いて検討したが、有意な細胞生存能の低下は認められず、アポトーシス誘導については否定的と考えられた。本研究では、研究期間全体を通じ、27-OHCが肺線維芽細胞に対してMMP-2およびMMP-9の産生亢進作用を有しており、これは窒素化ストレスによるNF-κB、TGF-β1の経路活性化を介していること、COPD由来の肺線維芽細胞では27-OHCによるMMPs産生作用がより亢進していることを証明した。27-OHCとプロテアーゼ産生亢進および窒素化ストレスとの関与を初めて示したものであり、COPDの新たなバイオマーカー及び治療ターゲットとして期待される。
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