研究課題/領域番号 |
25860660
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小島 淳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00408395)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | SIRT6 / COPD / オートファジー |
研究概要 |
抗老化作用を持つSirtuin familyの特にSIRT6の、喫煙誘導性細胞老化の抑制における役割を、オートファジー制御の観点から明らかにすることを目的とした検討である。 肺組織をCOPD、non-COPDsmoker、non-smokerに分け、ホモジナイザーを用いて肺組織の融解液を作成しSIRT6、老化の指標としての p21、オートファジー分解の指標として p62 の発現をそれぞれ検討した。結果COPD肺ではSIRT6発現は有意に低下し、p21の発現からは老化の亢進が示唆された。またp62の発現亢進からは、オートファジーによる分解が不十分であることが明らかとなった。さらにSIRT6の発現量は呼吸機能の1秒率と正の相関を示しており、COPD病態へのSIRT6の関与が示唆された。 手術肺より分離培養した、正常ヒト気道上皮細胞を用いて検討を行った。まず、喫煙刺激によるSIRT6の発現低下をみとめ、プロテアソーム阻害剤での抑制からは、傷害を受け分解が亢進していると考えられた。タバコ抽出液(cigarette smoke extract;以下CSE)刺激が誘導する細胞老化を、SIRT6が抑制することを過剰発現やノックダウンによる検討から明らかにした。またSIRT6がIGF-Akt-mTORシグナルを抑制し、オートファジーを亢進させることが、この抗老化作用を示す上で重要であることも明らかとなった。またSIRT6によるオートファジー制御にはHDAC作用が必要であることを、HDACのない変異型SIRT6の使用により確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上のCOPD肺組織及び培養気道上皮細胞を用いた検討から、SIRT6が発現低下した場合、IGF-Akt-mTORシグナル系の亢進によりオートファジー活性が低下、喫煙刺激誘導性細胞老化が亢進し、結果としてCOPD病態の進展に影響している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
SIRT6によるオートファジー制御機序に関して、培養気道上皮細胞を用いてさらに詳細な検討を行う必要がある。その際HDAC作用がどのような蛋白の転写制御に関与するのかが重要な課題となる。 マウスモデルを用いて、control siRNAもしくはSIRT6 siRNAを経鼻的に投与し、気道から肺胞にかけての上皮細胞におけるSIRT6のノックダウンを試みる。専用チャンバー内でタバコ煙を吸入させ、約4週間で肺気腫を評価する。それぞれ気管支肺胞洗浄液(BALF)の採取と肺の摘出を行う。ホルマリン固定標本とOCT compundを用いた凍結標本を作成する。ホルマリン固定肺はHematoxylin-Eosin(HE)染色により肺気腫を評価し、免疫染色によりオートファジーと細胞老化を検討する。凍結切片はSA beta-gal 染色により細胞老化を検討する。IGFを経気道的に投与し、オートファジー抑制と細胞老化、さらにCOPD病態への影響をさらに検討する。IGF-1とインスリンはシグナル伝達経路を共有し、2型糖尿病はCOPDの主な併存疾患である。つまり高インスリン血症を伴う2型糖尿病におけるSIRT6発現低下は、IGF/インスリンシグナル系のさらなる活性化からオートファジー低下と細胞老化亢進を誘導し、COPD病態進展に関与している可能性がある。そこで、高インスリン血症を伴う糖尿病モデルマウスを用いて、SIRT6のノックダウンの影響を検討することも興味深い課題と考えている。
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