研究課題/領域番号 |
25860661
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
原 弘道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70398791)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | COPD / ミトコンドリア |
研究概要 |
本研究は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の主要な病態である喫煙誘導細胞老化における、ミトコンドリア動態、マイトファジーの果たす役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、特にミトコンドリア動態の果たす役割について検討した。 手術肺より分離培養した、正常ヒト気道上皮細胞を用いて検討を行った。まず、喫煙刺激によるミトコンドリア動態の変化を蛍光顕微鏡にて観察した。喫煙刺激はミトコンドリアの分裂を促進し、フラグメント状のミトコンドリアが有意に増加した。一方で、喫煙刺激は、ミトコンドリア由来の活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)産生を増加し、細胞老化を促進した。抗酸化剤(N- acetyl-L-cysteine :NAC、MitoTEMPO®)はROS産生、細胞老化促進を抑制したことから、喫煙刺激はROSを介して細胞老化を誘導すると考えられた。 次に、ミトコンドリア分裂促進がROS、細胞老化へ及ぼす影響について検討を行った。ミトコンドリア融合蛋白(Mitofusin1,Mitofusin2,OPA1)のノックダウンにより、ミトコンドリア分裂を促進させた。ミトコンドリア分裂促進は、ミトコンドリア由来のROS産生を増加させ、細胞老化を誘導した。分裂促進によるROS増加、細胞老化亢進は、NAC及びMitoTEMPOにより抑制された。 これらの結果から、喫煙刺激による細胞老化誘導において、ミトコンドリア分裂促進に伴うROS産生増加が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、喫煙による細胞老化誘導におけるミトコンドリア動態、またマイトファジーの果たす役割を明らかにすることを目標としているが、本年度は前者を主に検討した。喫煙誘導細胞老化において、ミトコンドリア分裂促進がROS産生増加を介して、細胞老化誘導に重要である可能性明らかにできたと考えている。今後、ミトコンドリア動態の制御に関して、より詳細な機序の検討を行う予定である。後者に関しても、現在検討を開始し、マイトファジーの低下が喫煙誘導細胞老化に関連するというプレリミナリーな結果を得ている。喫煙誘導細胞老化誘導におけるミトコンドリア動態の関与、マイトファジーの関与の検討は、それぞれ、目標の80%、20%程度達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
喫煙による細胞老化誘導におけるミトコンドリア動態の役割とその制御機序に関しては、より詳細に機序を検討する。細胞全体、および、ミトコンドリア分画において、喫煙刺激による融合促進蛋白、分裂促進蛋白の発現量の変化をそれぞれ比較検討する。さらに変化のあった蛋白に注目し、ミトコンドリア動態に果たす役割を明らかにする。喫煙による翻訳後修飾(カルボニル化、ユビキチン化など)もその機序に重要な役割を果たしている可能性がある。ミトコンドリア融合促進蛋白及び分裂促進蛋白に関して翻訳後修飾の影響を検討する。また、COPD肺組織を用いて、実際のミトコンドリアの形態を電子顕微鏡で確認し、半定量的に評価する。さらに、COPD肺組織での融合促進蛋白、分裂促進蛋白の発現を免疫組織染色及び蛋白抽出液を用いて評価する。 喫煙による細胞老化誘導におけるマイトファジーの役割の検討に関しては、マイトファジー制御蛋白である、PINK1-Parkin系に注目して検討を行う。喫煙刺激のマイトファジーへ及ぼす影響、マイトファジーによる喫煙誘導細胞老化制御などを、培養細胞を用いて詳細に検討を行う。
|