研究実績の概要 |
107人のびまん性肺疾患患者において、診断のために施行した気管支肺胞洗浄液(BALF)の1部を用いて電子顕微鏡下に、石綿小体(ABs)、石綿繊維(AFs)、その他の繊維状物質や粒子状物質の構成成分を検出した。また、外科的に肺組織が得られた8人の患者の肺組織中のABsとBALFの所見の比較も行った。 107人のうち、職業性粉じん曝露歴陽性群は48人、陰性群は59人であった。電子顕微鏡下の粉じん解析では石綿繊維は職業性粉じん曝露歴陽性群からのみ11人に検出され、陰性群からは検出されなかった。光学顕微鏡では、この11人のうち、4人からのみ検出された。また、外科的に肺組織が得られた8人の患者の肺組織では、ABsは 3人の患者で1,000 本/g 以上は3人で光学顕微鏡で検出されたが、この3人においてはBALFを用いた電子顕微鏡による解析でもAFsは1000本/ml以上検出され、 相関していた(rS=0.913, p<0.01)が、BALFを用いた光学顕微鏡による石綿小体の検出では相関は得られなかった (rS=0.514)。また、職業性曝露群と非職業性曝露群の粒子状物質の構成成分の比較では、鉄とリンが職業性曝露群で有意に上昇していた。多変量解析においても鉄の上昇は職業性曝露歴は関連していた。リンの上昇も同様に多変量解析においても職業性曝露歴と関連していた。 以上より、BALFの電子顕微鏡による粉じん解析は、石綿の検出においては光学顕微鏡に比べて優れていることが示唆された。また、外科的に得られた肺組織の石綿小体定量と比べても同程度の感度であることが示された。構成成分の検出においては、粒子状物質の鉄とリンの検出が職業性曝露群で上昇しており、石綿繊維検出だけでなく、その構成成分の検出も職業性曝露の粉じん指標や職業関連肺疾患の診断に有用である可能性が示唆された。 なお、上記の概要はすでに国内海外の学会で発表し、また論文投稿中の状態である。
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