研究課題
我々は細胞の分化・増殖に関与するWNT/β-catenin signalとそのリガンドであるWNT10Aが線維芽細胞において細胞外マトリックスの産生を調整し,線維化の機序で重要な役割を担っていることを報告してきた。しかし,肺組織における役割については不明であった。今回,我々は特発性肺線維症(IPF)におけるWNT10Aの関与について検討を行った。C57BL/6を用いてブレオマイシン肺臓炎モデルマウスを作成し,肺内におけるWNT10Aの発現について調べた。さらにヒト線維芽細胞を用いて,WNT10AとTGF-β1の関連について検討を行った。また,外科的肺生検でUIP (Usual Interstitial Pneumonia)の病理診断が得られたIPF患者を対象とし,WNT10A発現と予後の関連について検討を行った。ブレオマイシン肺臓炎モデルマウスでは,線維芽細胞にWNT10Aが強く発現していた。また,ヒト線維芽細胞に対しTGF-β1で刺激を行ったところ,WNT familyの中でもWNT10Aが最も強く誘導されることを確認した。さらにSiRNAを用いて特異的にWNT10Aの発現を阻害することで,細胞外マトリックスの産生が抑制された。また,WNT10Aが強く発現する IPF患者では予後不良な経過を辿るだけでなく,急性増悪の発生と関連していた。つまり、IPFにおいてWNT10Aは線維芽細胞における分化・増殖に関与し,病態の進行を誘導しているだけでなく,急性増悪の発症にも関与していることが判明し、欧米誌に報告した。
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Respiratory Research
巻: 17 ページ: 39
10.1186/s12931-016-0357-0.
厚生労働科学研究委託業務 難治性疾患克服研究事業 びまん性肺疾患に対するエビデンスを構築する新規戦略的研究 平成26年度研究報告書.
巻: なし ページ: 137, 140