これまでの研究から、アンドロゲンシグナルが、慢性腎臓病や慢性糸球体腎炎の進行に関与している可能性が考えられている。 我々は、マウス腎においてアンドロゲン受容体が近位尿細管に限局して発現していることを免疫染色にて確認した。続いて、腎障害におけるアンドロゲンシグナルの役割を調べるために、アンドロゲン受容体ノックアウトマウス(ARKO)を用いた解析を行った。定常状態で、体重と腎重量はと野生株マウス(WT)に比べてAR-KOマウスで有意に少なかったが、血清の尿素窒素 (BUN) とクレアチニン(Cr)、尿中アルブミンは両者で差がなかった。次に、ARKOとWTに慢性腎臓病や腎線維化モデルである片側尿管結紮 (UUO)モデルを作成し、腎線維化の程度を比較した。ARKOでは、線維化マーカーであるαSMAとtypeIコラーゲンのmRNAレベルの発現がWTに比べて有意に上昇していた。しかしαSMAの蛋白レベルでの発現に有意差を見出すことはできなかった。続いて、ARKOとWTを用いて急性腎障害のモデルである片側腎摘出+片側腎虚血再灌流モデル(Nx+IR) を作成し、血清のBUNとCrの濃度を経時的に測定し比較した。ARKOではWTに比べ、モデル作成後24時間後の血清BUNの濃度が有意に高かったが、72時間後、7日後、14日後では有意差がなかった。 以上より、アンドロゲンシグナルの欠乏は腎線維化と片腎摘出+虚血再灌流後の急性腎障害を増悪させることが示唆された。
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