研究概要 |
近年、塩分の取り過ぎや過食といった生活習慣の変化に伴い、アルドステロン-鉱質コルチコイド受容体(MR)系の過剰な活性化が生じ、高血圧や心血管病、慢性腎臓病など予後を規定する疾患の発症に関わることが注目されている。特に近年増加しているメタボリックシンドロームや肥満では、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系が亢進し、食塩感受性高血圧や腎障害を合併しやすいことが知られているが、詳細な発症機序は未解明である。血圧の食塩感受性を決定するものにアルドステロン-MR系を初めとする腎臓のNa排泄機構異常があると考えられ、申請者らも既報で低分子量G蛋白Rac1がアルドステロン非依存性にMRを活性化し腎障害を引き起こすこと (Shibata S. et al., Nat Med, 2008)、食塩感受性動物では食塩刺激によるRac1の活性化が生じ、MR活性化を惹起して、食塩感受性高血圧や食塩依存性腎障害の発症を決定づける事を示してきた(Shibata S. et al., J Clin Invest. 2011)。本研究では、肥満や塩分過剰摂取などの環境因子と関連した食塩感受性高血圧や腎障害の発症原因の探求を目標とし、食塩感受性高血圧モデル動物を用いた、腎尿細管におけるNa排泄機構の解析を行っている。腎臓からのNa再吸収の調整因子としては交感神経系、RAA系、インスリンなどが知られ、そのエフェクターとして、近位尿細管のNa+/H+交換輸送体(NHE-3)及びNa+-HCO3共輸送体(NBCe1)系、ヘンレ係蹄太い上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC2),遠位尿細管のWNK4- Na+-Cl-共輸送体(NCC)系、遠位尿細管~集合管のRac1-MR系及び上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)があり、Na再吸収が制御されている。申請者はこれらをターゲットとし、食塩刺激がどの調整因子と連関し、どの部位のNa再吸収機構異常を招いているかを解析している。さらにその異常が、環境因子によるエピジェネティクス修飾と関連しているかを今後解析予定である。
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