研究課題
若手研究(B)
最近、血管平滑筋にもWNK-SPAK–NaK2Cl共輸送体(NKCC1)リン酸化カスケードが存在することを我々は明らかにした。NKCC1は血管収縮のために血管平滑筋細胞が脱分極してCaチャネルを開口させるための細胞内Cl-濃度維持に重要であり、NKCC1ノックアウトマウスはその破綻のために低血圧を呈する。同様にWNK1やSPAKのノックアウトマウスも血管トーヌスの低下を認めることを我々は報告した。そこで、腎臓だけでなく血管平滑筋においてもWNK-SPAK-NKCC1シグナルが生理的なメカニズムによって制御されている可能性が高いと考え、我々は塩分負荷によってWNK-SPAK-NKCC1シグナルが変化するかを検討した。結果、マウスを低塩分食にするとマウス大動脈でのSPAK及びNKCC1リン酸化がそれぞれ亢進し、高塩分食にすると逆に抑制されることを発見した。この現象がWNK3ノックアウトマウスにおいて消失する事から、WNK3が体内の塩分貯留状態を感知し、血管トーヌスを制御するWNKキナーゼである事が明らかになった。さらに低塩食とWNK3をつなぐ因子がアンギオテンシンIIである事を明らかにした。アンギオテンシンIIの負荷により、血管のWNK-SPAK-NKCC1シグナルが亢進することを証明した上で、WNK3ノックアウトマウスではその現象が確認できない上に、アンギオテンシンII負荷による血圧上昇と血管トーヌス上昇が不良である事を確認した。すなわち、血管平滑筋ではAngII-WNK3-SPAK-NKCC1シグナルが塩分負荷による血管トーヌス調整をする事を明らかにし、Hypertension誌(2013)に報告し、アメリカ腎臓学会でも学会報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
カルシウムイメージングを除き、研究目的や計画の大部分は達成されている。
今後は、WNK3がAngIIによって制御を受けるメカニズムを明らかにしていく。蛋白レベル、トランスクリプト等を検討する。特にWNKキナーゼの蛋白制御機構の詳細が明らかになって来ており、詳細を明らかにしていきたい。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Hypertension
巻: 62 ページ: 872-878
10.1161/HYPERTENSIONAHA.113.01543