研究課題
申請者は以前より脂肪由来幹細胞(adipose tissue-derived stromal cells:ASC)に着目して研究を行っており、増殖能が高く再生促進因子を多く分泌する非常に良質なASC を選択的に培養する方法(低血清培養法)を独自に開発した。申請者は新たに樹立されたこの細胞を用い、優れた腎再生促進作用を報告している。この低血清培養ASC(LASC)の臨床応用が申請者の最終目標である。腎疾患の多くは腎不全に進展し、透析療法に至る症例も多い。近年、在宅医療推進の潮流において腹膜透析に大きな注目がおかれているが、最大の合併症である腹膜炎は時に難治性であり腹膜透析の長期成績を低下させる主因になっている。申請者の研究室ではラットの腹膜炎モデルを確立させており、LASCの抗炎症作用、再生促進作用の効果を検証した。腹膜炎モデルに対し、ラット由来のLASCを腹腔内投与し効果を判定した。結果、LASC投与群において組織学的腹膜障害の軽減が確認された。またLASC投与群で、腹膜表層における補体制御因子が有意に増加した。今回の実験において、LASCは補体活性を伴ったザイモザン誘導の腹膜炎における腹膜障害を改善させた。この効果の少なくとも一部はLASCによる補体活性制御と考えられる。LASC投与によって補体活性が抑制される理由として、中皮細胞層の修復が考えられた。In vitroにおいてLASCは中皮細胞の増殖を促進させた。また、LASCより放出されたHGFが補体制御因子を豊富に持つ中皮細胞の修復の一助となった可能性がある。加えて、LASCそのものがCrry・CD55・CD59といった補体制御因子を有しており、LASC自体が局所の補体活性に対して抑制的に直接働いた可能性もある。LASCは補体活性制御という真菌性腹膜炎の腹膜障害に対する新たな治療戦略の一つとなり得る。
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