研究課題/領域番号 |
25860675
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 達之 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員 (60598564)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | iPS細胞 |
研究概要 |
無限の増殖能と多分化能を有するiPS細胞(人工多能性幹細胞)は再生医療の要として盛んに研究が行われている。iPS細胞から腎発生機構を模倣した、段階的な増殖因子処理や培養法の組み合わせに加えて、低分子化合物によるスクリーニングを行い高効率な腎近位尿細管細胞と腎糸球体上皮細胞の分化誘導法の開発を行う。 平成25年度は、ヒトiPS細胞由来SIX2陽性ネフロン前駆細胞から成長因子ならびに低分子化合物のHigh-throughput screening (HTS)を用いた近位尿細管上皮細胞、糸球体上皮細胞への高効率な分化誘導剤の探索を行うことを目標とした。 本年度までにSIX2陽性細胞の分化誘導法を開発していた(Toyohara T, et al. in preparation)が、スクリーニングに使用する細胞数を大量かつ安定して供給するには不十分であった。そこでSIX2陽性細胞を大量かつ安定的に分化誘導するための低分子化合物探索を行った。当研究室が所蔵する低分子化合物ライブラリー(約20,000種)を使用し分化誘導スクリーニングを行い、数種類のHit候補化合物を見出した。詳細な検討により新たな発生学知見もしくは高度な分化誘導法の確立に近づくと考えている。また、他施設からも種々の腎前駆細胞誘導法が報告されており(Taguchi A, et al. Cell stem cell. 2014; Takasato M, et al. Nat cell biol. 2014)、それらを組み合わせながら、より良い誘導法の開発を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度はヒトiPS細胞由来SIX2陽性ネフロン前駆細胞から成長因子ならびに低分子化合物のHigh-throughput screening (HTS)を用いた近位尿細管上皮細胞、糸球体上皮細胞への高効率な分化誘導剤の探索を行う予定であった。SIX2陽性ネフロン前駆細胞の分化誘導法は確立した(Toyohara T, et al. in preparation)が、スクリーニングに使用できる細胞量が、安定して誘導することが困難であるため、計画から遅れが生じている。これを改善すべく、SIX2陽性ネフロン前駆細胞の高効率な分化誘導法の開発を行っている。ネフロン前駆細胞を高効率に誘導する候補化合物は同定できていることから新たな発生学的知見や分化誘導法が構築できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在SIX2陽性ネフロン前駆細胞の高効率な分化誘導法の開発を行っている。低分子化合物スクリーニングによりHit候補化合物を同定した。今後、候補化合物による腎前駆細胞誘導法の改良を行い、至適な分化誘導条件(用量、刺激時間など)を構築する。当研究室で開発した分化誘導法(Toyohara T, et al. in preparation)に加え、多施設から報告のあった誘導法(Taguchi A, et al. Cell stem cell. 2014; Takasato M, et al. Nat cell biol. 2014)に関しても検討を行う。また新規化合物を加えて誘導されたSIX2陽性細胞が、腎前駆細胞として成体腎細胞への分化能を有するかどうかを器官培養で管腔形成や腎細胞マーカー発現の検証を行う。機能解析により発生分化における新たな機序解明につながる可能性もあるため、マウス胎仔腎における新規化合物の役割についても解明を行う。その結果、大量かつ安定した腎前駆細胞の供給が可能となれば、成体腎細胞への分化誘導スクリーニングを行っていく予定である。
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