研究概要 |
我々は、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(MSC)が、通常のウシ胎児血清添加培地で培養したMSCと比較して、抗炎症作用などが増強していると考え、ラットにおけるその効果を検討している。 ラットの骨髄からMSCを採取し、それを10%ウシ胎児血清添加培地、間葉系幹細胞用無血清培地(DSファーマバイオメディカル)にて各々培養し、十分な細胞数になるまで増殖させた。 Day0にラットの左尿管を2重結紮し、左水腎症による腎線維化モデルを作製した。Day1,3に①経尾静脈的にD-PBSのみ投与する群、②ウシ胎児血清添加培地で培養したMSCを投与する群(約200万細胞/匹)、③無血清培地で培養した同量のMSCを投与する群の3群にそれぞれ6匹ずつ振り分け、それとは別に④尿管を結紮せず経尾静脈的にD-PBSのみ投与する群(コントロール)として各6匹づつを用いて、評価を行った。 コントロールに比べ、TGF-β1、MCP-1、TNF-αなどの炎症前駆系マーカーにて、①、②、③の群の順にmRNAの発現が減弱している事が観察され(n=6)、有意にウシ胎児血清添加培地培養のMSC投与群より、無血清培地培養のMSC投与群での炎症前駆系蛋白の発現が抑制されている事が示されている。また、Western Blottingにおいても線維化マーカーであるα-SMAや、TGF-β1の蛋白発現は無血清培地培養のMSCにて減弱する傾向を得た。免疫染色による組織学的評価も並行して行っている。
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