我々は、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(MSC)が、通常のウシ胎児血清添加培地で培養したMSCと比較して、抗線維化・抗炎症作用が増強していると考え、ラットにおけるその効果を検討している。ラットの骨髄からMSCを採取し、ラットの左水腎症モデルをDay0に作製後、Day4に①経尾静脈的にD-PBSのみ投与する群(コントロール)、②ウシ胎児血清添加培地で培養したMSCを投与する群、③無血清培地で培養したMSCを投与する群の3群に分け評価した。 まず、GFPトランスジェニックラットから採取したMSCを上記の様に培養・投与した所、投与翌日のDay5には肺や腎にGFP陽性細胞を認め、Day7まで認められるも、Day10には確認できなくなっていた。また、ウシ胎児血清添加培地培養MSCと無血清培地培養MSCで、生着期間に有意な差は認められなかった。 Day10に屠殺後、α-SMAやTGF-β1といった線維化マーカーの蛋白発現量やmRNAレベルは、コントロール群と比して、MSC投与群で有意に低下し、さらに無血清培地培養MSCを投与した群でより有意に低下した。炎症マーカーでは、MCP-1やIL-6のmRNAレベルが、コントロール群と比較してMSC投与群で有意に低下しており、その中でも無血清培地培養MSCを投与した群で有意に低下していた。ED-1やCD3については免疫染色で評価し、同様に無血清培地培養MSC投与群で有意に発現が最も低下していた。 一方で、ヒト近位尿細管上皮由来細胞(HK-2)に対して、ウシ血清含有培地MSC、無血清培地培養MSCを用いて作製したMSC馴化培地に培地を変更後、TGF-β1刺激を行った。48時間後に線維化マーカーであるα-SMAは、コントロール(培地変更なし)と比較して馴化培地群で有意に低下しており、無血清培地培養MSCによる馴化培地群でより有意に低下していた。
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