研究課題
奈良県立医科大学輸血部で実施してきた非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)患者の解析システムが、2014年9月に東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科に移行した。これに伴い、研究代表者も東大病院へ異動したことから、本研究の実施拠点が東大病院へ移行した。患者集積については、奈良医大輸血部で2014年8月末までに計90例のaHUS患者を、東大病院で9月から2015年3月末までに計14例の症例を集積した。補体調節因子系の解析システムの構築については、羊赤血球を用いた溶血試験、抗H因子抗体解析、本邦好発の変異であるC3のI1157T変異を簡便に検出するRFLP解析を樹立した。解析を実施した70例のうち、溶血試験では15例(20%)の症例で溶血度50%以上の溶血亢進を認め、うち4例にH因子遺伝子異常、6例に抗H因子抗体、1例にC3異常を認めた。C3のRFLP解析では21例の患者にI1157T変異が同定された。遺伝子解析の結果、本邦ではC3異常が35%(25/70)と欧米(5-10%)に比べて高く、特にI1157T変異を有していた21例は全て関西地域の症例であったことから、本変異の地域特異性が示唆された。今回集積したaHUS患者の約60%は関西地域に分布していたことから、今後はより全国レベルでの患者収集・解析の必要性が示唆された。本研究を通して本邦初の計104例のaHUS患者コホートの樹立、aHUS患者解析システムの構築を成し得た。その結果、溶血試験とRFLP解析により患者の約半数は早期に診断が可能であることが示され、本邦と欧米では異なる遺伝子背景を持つ可能性も示唆された。本研究は希少疾患かつ診断が難しいaHUS患者の診断システムの向上に貢献できたと考える。今後は、aHUS患者の遺伝子異常別の予後、治療への反応性を調べるとともに、新たな遺伝子解析法を立ち上げ、新規遺伝子異常の発見を目指す。
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