研究課題
(背景・これまでの実績)我々は昨年、ポドサイトにおいて転写因子KLF4を介したエピゲノム調節によりポドサイト形質が制御されていることを報告した(JCI 2014)。今年度は、当初の研究実施計画書では、糖尿病性モデル、アドリアマイシン(ADM)腎症モデルにおけるKLF4遺伝子導入による効果を検討する予定であったが、昨年度までに実施し報告することができたため、当初KLF4に着目するきっかけとなったレニンアンジオテンシン系抑制とKLF4との関連、エピジェネティックな変化について検討した。(方法・結果)マウスのアドリアマイシン腎症に対してACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を投与すると、尿アルブミンの改善と共にKLF4発現の回復、ネフリンプロモーター領域メチル化の低下を認め、ポドサイト特異的KLF4ノックアウトマウスにおいてはARB投与によるこれらの効果は減弱していた。ヒト培養ポドサイトにアンジオテンシンII(AngII)を添加すると時間・用量依存性にKLF4発現減少を認め、ARB同時添加によりKLF4減少は抑制され、更に2週間のAngII添加下ではネフリンプロモーター領域の有意なメチル化亢進を認めた。またヒト腎生検検体においてマイクロダイセクション法により得た糸球体サンプルを用いて、ネフリンプロモーター領域メチル化状態を検討し、KLF4発現、RAS抑制薬使用との関連についても検討した。(結論)RAS抑制薬は一部KLF4を介してポドサイトのエピゲノム調節に関与し尿蛋白抑制作用を発揮する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
遺伝子改変動物の繁殖がスムーズに行えたことにより、前倒しで研究計画を実施することが出来、昨年度までに、今年度の計画をほぼ実施することが出来たため、当初の計画以上に進展することが出来た。
当初の計画以上に研究を実施できているため、本年度は更にレニンアンジオテンシン系と、高血圧・腎臓病等の疾患との関連に関して、どのようなエピジェネテイックな分子機序が作用しているのかを具体的に解明していきたいと考えている。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
次年度の消耗品費に加えて使用させて頂きたいと考えている。
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