研究課題
我が国における糖尿病患者の増加と共に、糖尿病腎症を有する患者数も増加の一途を辿っている。腎症から慢性透析に移行した患者の生存率は、他の腎疾患に起因する透析患者と比べて著しく不良である。腎症の病態解明は末期腎不全への進展を阻止する新たな治療戦略の構築や生命予後改善につながる可能性があり、学究的側面のみならず、透析医療を取り巻く経済的側面からも喫緊の課題となっている。我々は、新たな治療標的として低分子量G蛋白Rhoの標的分子Rho-kinaseに着目している。これまでの検討では、Rho-kinaseの活性化が糖尿病の病型を問わず腎組織で認められること、このシグナルが酸化ストレスや炎症病態、低酸素応答を介して腎の線維化を促進させることを報告してきた。本研究では、腎症で観察されるNotchシグナルを介した糸球体上皮細胞の細胞死とRho-kinaseの関連性を検討した。糸球体上皮細胞培養株と2型糖尿病モデルマウスを用いた実験から、Rho-kinaseの作用を阻害することによって、Notchシグナルの過剰な活性化や糸球体細胞死、尿中への脱落を抑制できることが明らかになった。また、この作用にはRho-kinaseのアイソフォームであるROCK2が主に関与していることを見出した。Rho-kinase阻害薬は既に心血管領域で臨床応用が進められているが、腎症に対してはROCK2選択的な阻害薬がより有効である可能性がある。
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Am J Physiol Renal Physiol.
巻: 307 ページ: F571-80
10.1152/ajprenal.00113.2014.
http://www.diabendo.jp/study/complication.html