研究課題
若手研究(B)
ERM蛋白質は腎糸球体において異なる局在を示している。特にezrinは糸球体足細胞に特異的に発現しており、足細胞の形態形成に重要な役割を果たしている事が想定される。しかし、ezrinの発現を著しく低下したezrinノックダウンマウスでは足突起形成に異常が見られず、尿中への蛋白質の漏出も見られない事を電子顕微鏡解析やメタボリックケージを用いた代謝解析で明らかにした。これらのマウスを用いてドキソルビシン腎症モデルを作成した際の腎障害の程度について現在検討中であるが、ezrinの欠損が薬剤誘導性の糸球体障害に対して保護的に働いている可能性を見出している。糸球体足細胞では低分子量G蛋白質のRhoファミリー蛋白質が豊富に存在しているが、本研究ではその下流に位置するRho kinaseやRhoの制御因子の一つであるRhoGDI (Rho GDP dissociation inhibitor)の発現が周囲の細胞に比べて非常に高い事を確認した。RhoGDIのノックアウトマウスでは特異的な表現型として腎糸球体障害が生じる事が報告されており、RhoAの異常な活性化が糸球体足細胞の形態異常を誘発する。ezrinはRhoGDIと結合能を有しRhoGDIのRho-GDPからの解離を亢進する事でRhoA活性を高める事が示唆されており、ezrinの欠損はRhoAの活性化を抑制する役割を果たしている事が想定される。糸球体足細胞におけるezrinの役割を明らかにする事はネフローゼ症候群に対する新たな治療法の可能性に繋がる事が期待出来る。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスを用いた病態モデル作成が順調に実施出来ており、個体レベルでのezrinの糸球体における役割が明らかとなりつつある。また、不死化足細胞を用いたin vitroでの研究も、ezrin発現抑制等、予定通り順調に進行している。
ezrinがRhoシグナル伝達に与える影響について、in vivoとin vitroの実験を並行してより詳細に検討する。また、ezrinの活性化状態が糸球体傷害時にどのように変動するかについても検討する。ezrinの機能的な阻害剤についても検討し、様々な病態モデルに対する治療効果についても検討を行うことで、ヒトの糸球体傷害に対する治療標的としての可能性について考慮する。
購入予定の試薬の納品が海外からの輸入の為に次年度にまたがったため。次年度に試薬が納品された後、適宜必要経費として執行する。
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