研究課題
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitohagy調節]パーキンソン病とミトコンドリア機能低下の関係は古くから指摘されています。私達はこれまでに、DJ-1を欠損させるとミトコンドリアの膜電位が低下することを明らかとしており、DJ-1がミトコンドリア機能調節に関与していることが示唆されますが、そのメカニズムは不明です。そこで、DJ-1がミトコンドリア調節を行う際にパートナーとなる因子を探索し、DJ-1がMitophagy(ミトコンドリアで起こるオートファジー)に関与するBeclinと結合することを見出しました。[DJ-1のプロテアーゼ機能の解析]DJ-1のX線結晶構造解析から、DJ-1は古細菌のプロテアーゼiと構造が酷似している事が示唆されました。私達は、C末端領域を欠損したDJ-1ΔH9を大腸菌を用いて作製・精製し、プロテアーゼ活性を有すること、ストレス条件下でDJ-1のC末端が欠損する事を明らかとしています。これらのことから、生体内においてDJ-1が切断を受けプロテアーゼ活性を持ち始めると考えられます。そこで、本研究では、まずDJ-1のプロテアーゼとしての性質・機能・基質の探索を行いました。DJ-1プロテアーゼはpH5.5で最も活性が高くなる事、NaClが増加すると活性が低下する事、Cu存在下でも活性が低下する事を見出しました。また、切断配列の絞り込みにも成功し、DJ-1プロテアーゼが好んで切断する配列を明らかとし、それを元に基質候補を絞り込み、いくつかの基質候補が実際にDJ-1によって切断される事を見出しました。[DJ-1の分泌機能の解明-神経細胞保護機能-]申請者はこれまでに、家族性パーキンソン病患者で報告されている変異型DJ-1の細胞外への分泌が、野生型DJ-1に比べて少ない事、酸化ストレス存在下においてDJ-1の分泌により共培養した神経細胞の生存率が増加した事などを明らかとしています。
2: おおむね順調に進展している
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitohagy調節]DJ-1とBeclinの結合が直接的である事、その結合が酸化ストレス下で増強される事などを明らかとし、DJ-1とBeclinの分子間相互作用の解析は終了しました。しかし、DJ-1とBeclinの相互作用がMitophagyに直接与える影響の解析が予定どおりに進んでいないため、この項目は「やや遅れている」と評価しました。[DJ-1のプロテアーゼ機能の解析]DJ-1のC末端を欠損したDJ-1ΔH9を用いて、DJ-1のプロテアーゼとしての特徴の解析を行いました。また、DJ-1によって切断される配列の特定を行い、特定された配列を元に基質候補をしぼり、DJ-1によって直接切断されるものを見出しました。現在は細胞内においても同様の結果が得られるのか検討中であり、この項目は「おおむね順調に進展している」と評価しました。[DJ-1の分泌機能の解明-神経細胞保護機能-]DJ-1による神経保護機能が、分泌されたDJ-1によるダイレクトな機能であるかどうか確かめるために、分泌されたDJ-1を補足できる抗DJ-1抗体を選定し、見つけた抗体を用いて、細胞に分泌されたDJ-1を補足した時の神経細胞の酸化ストレスへの脆弱性を確かめたところ、抗DJ-1抗体の添加によって、神経細胞の酸化ストレスへの脆弱性が高まりました。この項目についても「おおむね順調に進展している」と評価しました。
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitohagy調節]BeclinがMitophagyに与える効果に対するDJ-1の効果を、siRNAやCRISPRなどのゲノム編集技術を用いて解析を進める方策です。[DJ-1のプロテアーゼ機能の解析]DJ-1プロテアーゼの活性化型であるDJ-1ΔH9が細胞内では大変分解されやすいことがわかり、細胞内での解析が滞ってしまいました。今後は、DJ-1ΔH9の分解系の解析をすすめ、また、発現誘導系で発現時期を調節できる系で解析を進めて行く方策です。
主な理由としては、[DJ-1のプロテアーゼ機能の解析及び基質探索]において、細胞内での解析が予定どおりにすすまなかったことが上げられます。現在までに、DJ-1プロテアーゼ活性化型が細胞内で分解されやすいことがわかり、細胞内での解析のための実験系確立を行いました。
字年度においては、[DJ-1のプロテアーゼ機能の解析及び基質探索]および[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節]のための培養細胞および実験動物由来の細胞を用いた解析を予定しており、そのための試薬購入に使用予定です。さらに、その研究成果発表を行う経費にも使用します。
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