研究課題
若手研究(B)
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は自己免疫性ニューロパチーとされるが、標的抗原は全く不明であり、確立した診断マーカーもないため診断が遅れ難治化する症例も多いことが大きな臨床的問題点である。またCIDPは複数の病態を含む症候群で、臨床的・電気生理学的にサブグループに分けられる。当研究では、CIDP患者血清中の自己抗体の標的分子をプロテオーム解析法を用いて網羅的に探索し、疾患の病態に関与する新規epitopeを明らかにし、CIDPのバイオマーカーを確立することを目的とした。平成25年度はまず研究に用いる血清の患者データを臨床症状と電気生理学的に分類した。そのうえで2つのプロテオーム解析法「ゲルを用いた抗原探索法」と「免疫沈降法を用いた抗原探索法」の2つの手法を用いてCIDP患者血清IgGの標的抗原探索を行った。「ゲルを用いた抗原探索法」ではブタ馬尾から抽出した蛋白質を抗原として2次元電気泳動を展開し、CIDP患者血清中IgGと反応する抗原候補蛋白質をWestren Blottingにより評価した。その結果、質量分析計により7個の候補蛋白質を同定した。「免疫沈降法を用いた抗原探索法」では、Schwannoma細胞株に対してCIDP患者3例の血清を反応させ、患者血清中IgGが結合した分子を免疫沈降法により分離し、約120個の膜蛋白質が同定された。「ゲルを用いた抗原探索法」で得られた候補については、多症例の検体について合成蛋白質を用いて、Western blotting法により評価し、病型・重症度・予後にわけた解析を行った。さらに、その過程で絞り込まれた候補蛋白質は細胞接着に関わる分子であり、これについて、組織での局在の解析(免疫組織化学的評価)を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、ブタ馬尾から抽出した蛋白質を2次元電気泳動法で展開し、CIDPの患者血清中IgGと免疫反応する抗原をWestern Blottingで評価し、反応のみられた抗原蛋白質を質量分析計で同定することで有望な免疫標的分子の候補が判明した。さらに多症例検体での検討と免疫組織学的な評価を行うことができた。このことから、おおむね順調に進展していると考えられる。しかし、もう一つの手法である「免疫沈降法を用いた抗原探索法」では、同定された候補蛋白質が多く選別法を再検討する必要があり、今後の検討課題である。
「ゲルを用いた抗原探索法」から同定された有望な免疫標的分子候補については、今後さらに多症例での検討を定量的に行うために、ELISAの作製を試みる。また患者血清中IgGとその分子の結合部位(アミノ酸配列)を明らかにするため、蛋白質のN末側、中間部、C末側の3分割に断片化した抗原蛋白質を作製し、患者血清中IgGと反応させて標的部位を解析する。「免疫沈降法を用いた抗原探索法」では、多くの候補蛋白質が同定されており、この選別が課題である。疾患症例数を増やし、正常対照との比較を行い、さらに既存のデータベースや報告を参照することで候補の絞り込みを行う予定である。
合成蛋白質に使用する費用が1つあたり約10万円であり端数の金額の18172円を翌年に持ち越した。Western blottingに必要な合成蛋白質やELISA作製に必要な抗体などを購入する費用に加える予定である。
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