研究概要 |
本研究は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序解明を目的とする.我々はALS罹患組織におけるRNA代謝の異常に注目し,mRNAのスプライシングに関連するsmall nuclear RNAs (snRNAs)が低下する事,およびsnRNAsの成熟に重要な核内小体,GEM小体がALS患者組織にて低下している事を既に見出している.本研究の目的はGEM小体減少の具体的機序を明らかにし,ALS病態生理の解明を進めることである.我々は平成25年度に培養細胞およびALS罹患組織にてGEM小体関連蛋白の定量を行ったのでこれを報告する. siRNA法によるTDP-43発現抑制Hela細胞にてウェスタンブロット法,逆転写定量PCR法により解析を行った.逆転写定量PCR法の条件設定は国際的な実験ガイドラインに準じた.使用するRNAの品質は,バイオアナライザー2100を用いて確認し,内在性コントロールの設定に当たっては15種類の候補遺伝子の発現を計測し,内在性コントロール選定ソフト GeNorm を用いて設定した.その結果,複数種類のsiRNA プローブによるTDP-43発現抑制細胞それぞれで,GEM小体の主要構成蛋白質であるSMNおよび Gemin 3,6,8 蛋白質の発現低下を認めた.またSMN mRNAの発現量低下を認めた.これらの結果からは,TDP-43機能低下はSMN蛋白質の発現低下を介して,GEM小体数を低下させることが予想された.しかしALS罹患組織である脊髄,大脳皮質運動野での解析では,SMN mRNAは対照群と比較して有意な減少を呈さなかった.ALS罹患組織におけるGEM小体数の低下は,SMN蛋白の直接的な低下のみでは説明が困難である.これに関しては我々は核内でのGEM小体の形成,安定化にTDP-43蛋白質が寄与する可能性を考えている.
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