研究課題/領域番号 |
25860704
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福島 和広 信州大学, 医学部附属病院, 准教授 (10421835)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 若年性認知症 / 白質脳症 / ミクログリア / コロニー刺激因子1受容体 / スフェロイド / マクロファージ |
研究概要 |
1) HDLS脳におけるCSF1R, DAP12, Wnt/β-cateninシグナル伝達経路の検討 HDLS患者4例および対照4例の凍結脳標本(前頭葉白質)から抽出したタンパクを用いた。Western blot法でCSF1R, DAP12, Wnt/β-cateninシグナル伝達分子のタンパク発現を検討した。その結果、HDLS脳では CSF-1Rの蛋白発現が著明に低下しており、本症の病態を反映したものと考えられた。GSK3β、β-cateninの総およびリン酸化タンパク量には対照群・HDLS群間で明らかな差違は認められなかった。 2)HDLS患者末梢血単球を用いた誘導マクロファージの検討 HDLS患者2例および健常者2例から採取したCD14陽性の末梢血単核球(単球)を用いた。これらをCSF1RのリガンドであるCSF-1およびIL-34、またCFS2RのリガンドであるCSF-2の存在下で培養し、細胞形態の検討およびwestern blotとDNAマイクロアレイを用いたシグナル伝達分子に関する解析を行った。HDLS患者の単球はCSF-1およびIL-34刺激によるマクロファージへの分化・生存が障害されており、CSF1Rシグナル異常によるものと考えられる。また、HDLS患者の末梢血単球では,CSF-2刺激にけるマクロファージへの分化も障害されている可能性があり、造血幹細胞から単球への分化過程においても重要であるCSF1Rシグナルの異常が原因と推測される。本検討は本症に特異的な細胞内シグナル伝達の異常を明らかにする手がかりとなる可能性がある。CSF1Rシグナル異常は末梢血マクロファージのM2 stateの維持に重要であり、M1/M2比に影響を及ぼしうる可能性も推測される。近年、ミクログリアのM1/M2比の異常が種々の神経変性疾患の病態に関与する可能性が示唆されている点からも興味深い。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1) HDLS患者脳におけるCSF1R, DAP12, Wnt/β-cateninシグナル伝達経路の検討・・・概ね達成されている。 2) HDLS患者の脳検体を用いたプロテオーム解析・・・現在遂行中であり、やや遅れている。 3) HDLS患者のミクログリアにおける遺伝子発現プロファイルの検討・・・現在遂行中であり、やや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
HDLS患者の脳検体を用いたプロテオーム解析、HDLS患者のミクログリアにおける遺伝子発現プロファイルの検討を進める。またHDLS患者由来の単球はCSF1およびCSF2に対する形態変化が健常者とは明らかに異なっていることから、今後はプロテオームおよび遺伝子発現プロファイルの解析を行い本症に特異的な遺伝子発現、細胞内シグナルの異常の検討を進める予定である。また患者および対照におけるマクロファージ系細胞の機能的サブセット(M1/M2比)の差異に関して、末梢血単球球由来マクロファージおよび剖検脳標本のミクログリアに関して検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度にDNAマイクロアレイの受託解析を外部業者に委託する際の費用として繰り越したために次年度使用額が生じた。 DNAマイクロアレイ解析、プロテオーム解析、抗体・培養用の試薬類の購入に使用する予定である。
|