1.正常およびALS患者のiPS細胞の樹立 倫理委員会の承認のもと、本学歯科口腔外科学分野と連携し、正常例、およびALS患者の歯髄、あるいは歯槽部骨膜の細胞を採取し、iPS細胞を樹立した。1例のALS患者から歯髄組織幹細胞由来iPS細胞を作製し、nude miceの精巣内へ注入し、3胚葉への分化を確認した。さらに3例のALS患者の歯髄組織幹細胞からiPS細胞の樹立を試みた。
2.正常およびALS患者由来iPS細胞から、運動ニューロンへ分化誘導 iPS細胞から運動ニューロンへの分化については、ソニックヘッジホック作動薬とレチノイン酸を添加すると、神経細胞のマーカーであるTuj1陽性細胞が突起を伴って出現し、うち約20%に運動ニューロンに特異的な転写因子であるHB9の発現がみとめられる。既報のプロトコールに従い、iPS細胞から運動ニューロンへの分化誘導系を構築した。安定した手技を目指し検討を行った。 またALSのモデル犬の歯髄細胞を分離培養し、治療応用を目指し検討を行った。健常犬の犬歯から歯髄組織を採取し、歯髄細胞を樹立した。リアルタイムPCR方を用いて、歯髄細胞における神経栄養因子のmRNAの発現を測定した。BDNF、NT-3、NGFといった多種の神経栄養因子が多量に発現していることを確認した。また、免疫組織学的検討では、神経系の前駆細胞にみられるマーカーが発現していた。また、歯髄細胞自体が神経系の細胞へ誘導可能なことも確認した。
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