研究課題
パーキンソン病は中脳黒質のドパミン産生細胞の脱落などにより運動機能障害が生じる神経変性疾患であるが、未だに発症機構が不明であり完全な治療法も確立されていない。本研究ではパーキンソン病の発症機構の解明を目的とし、孤発性パーキンソン病のモデルマウスの作製を目指した。前年度までに作製したαーシヌクレインのトランスジェニックマウスに酸化ストレスを負荷したマウスについて、今年度は主に生化学的な解析を行った。作製したマウスでは、行動解析で異常が認められた月齢においてαーシヌクレインが中脳や線条体で不溶化する傾向にあることがウエスタンブロットで確認された。このとき、オリゴマー化したシヌクレインの増加も観察された。この結果と一致して、免疫組織染色を用いた実験ではタンパク質分解酵素に耐性を持つと考えられるαーシヌクレインが増加していた。またドパミン産生細胞の脱落も観察された。一方で、中脳黒質の神経細胞全体・各細胞小器官の形態異常は観察されなかったことから、酸化ストレスはαーシヌクレインに直接作用して凝集や変性を誘導すると考えられ、それがドパミン産生細胞の障害を引き起こす可能性が示唆された。本計画で作製したマウスは、加齢に伴うパーキンソン病を一部再現できるモデルマウスとして有用である。今後、作製したマウスを用いてさらなる発症機構の解明や治療薬の候補の投与実験などを行うことでパーキンソン病の治療法の確立に貢献できると考えられる。
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