最終年度として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子であるオプチニューリン(OPTN)を欠損させたマウス(OPTN-KOマウス)の遺伝的背景の純化および行動解析に着手した。純化を終えたマウスの行動解析に関して、現時点では体重の変化や運動機能を調べるロータロッド試験において野生型と比較して未だ有意な変化は見られていない。そのため先行して未純化な世代のOPTN-KOマウスを24ヶ月齢の老齢期まで行動・組織学的に解析したが野生型との違いは見られなかった。また、ヒト変異型スーパーオキシドジスムターゼ1遺伝子改変マウス(mSOD1マウス)については、OPTNを欠損させることで寿命が有意に増加することを明らかにした。 研究期間全体を通して実施した研究の成果は、マウスの純化および繁殖に予定以上に時間がかかってしまったことや、早期に変化が現れず老齢期までの2年間解析を続けなければいけなかったことから計画通りには進まなかった。しかし、行動・組織学的な解析方法が確立し、ALSについてマウスで調べるためのストラテジーを得ることができ、何よりも遺伝的背景が未純化とはいえ一連の結果を得ることができた。また、mSOD1マウスのOPTN欠損の研究については、予想外にも寿命を延ばすという結果が得られ、ALS治療に向けての非常に有益な結果であると考えられる。 今後は純化済みのOPTN-KOマウスの行動解析を老齢期まで行い、この時期の脳・脊髄について組織解析を行う予定である。mSOD1マウスにおけるOPTNの機能については、個体レベルで見られた寿命延長のメカニズムについて解析を進めていく予定である。
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