研究課題
若手研究(B)
すでに申請者らが報告しているように、Wistar Ratから骨髄間葉系細胞を採取、培養し、beta-mercaptoethanol(BME)、レチノイン酸(RA)で処理した後、human basic fibroblast growth factor (FGF)、forskolin (FSK)、platelet-derived growth factor-AA (PDGF)、heregulin-beta1-EGF-domain (HRG)の栄養因子を加えることで、シュワン細胞を誘導した。シュワン細胞への誘導の確認は、P0、Krox20、S-100、O4等の発現を、RT-PCRおよび免疫細胞化学で調べることによって行った。動物モデルとしては、Wistar Ratに対し、一側の黒質緻密層にカテコールアミン神経選択毒の6-ハイドロキシドパミン(6-OHDA)を注入して,片側パーキンソン病モデルラットを作成。モデル作成後、動物はアポモルフィン誘発回転運動による行動評価を行い、症状の軽い動物は除外し、同等の症状の動物のみ選択した。本方法によってモデルを作成し、1分間の回転運動が10回以上のものを採用した。これまでで、モデル作成成功率は約35%である。このようにして作成したパーキンソンモデルラットの黒質緻密層に対し、細胞を移植。移植細胞は、細胞なし(vehicle)、誘導前間葉系細胞、誘導シュワン細胞群と3群で行った。移植群を、現段階では1-12週の間で評価しているが、効果を認める群では誘導シュワン細胞移植群において、移植後2週程度から、回転運動の明らかな現象を認めている。組織学的には、移植細胞についてはMAG、MBP、GFAP、O4、P0等の発現について免疫組織化学的評価を行い、host細胞においてはhostの細胞に関してはDAT、TH等のドパミン産生細胞のマーカーで調べている。
2: おおむね順調に進展している
移植細胞の誘導、確保と、パーキンソン病モデルラットの確立は、当初の計画より早めに進んでいる。移植細胞の標識方法として計画していた、レンチウィルスを用いたGFP標識方法が、標識率が低かったため計画通りにはうまくいかず、現在他の方法を検討中である。全体としては、ほぼ当初の計画と同等の進捗状況と思われる。
引き続き、骨髄間葉系細胞からのシュワン細胞の誘導と、パーキンソン病モデルの作成、モデルへの細胞移植を行い、行動、組織学的評価を行う。また、適切な評価機関に関しても検討する。移植細胞の標識方法としては、GFPラット由来の骨髄間葉系細胞を用いて行う。シュワン細胞誘導の段階毎にGDNF、FGF-20の発現を定量PCR等で調べておく。これらは誘導細胞に元々軽度発現していることも想定されるが、それらを確認した上で、レトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入法により、GDNF、FGF-20の発現を促進させた誘導シュワン細胞を作成する。発現の上昇についても、定量PCR等で確認する。GDNFを過剰発現させた誘導シュワン細胞、FGF-20を過剰発現させた誘導シュワン細胞を準備し、それぞれの移植群につき、十分な移植動物数を確保する。組織学的評価と機能評価を行う。ドパミン産生細胞への分化以外にも、神経幹細胞の増殖や、成熟神経細胞の増殖を来たす可能性もあり、hostの脳におけるpax6、sox2、NeuN、Neurofilamentなどの発現も確認する。これらの発現を定量的にも評価する。また、移植細胞の分布や、移植細胞とhostのドパミン産生細胞や他の神経系細胞との局在の関係についても、免疫組織化学的に確認する。これらの実験を踏まえ、最も細胞移植に効果的な骨髄間葉系由来シュワン細胞の樹立を行う。また、臍帯由来間葉系細胞においても同様の実験を行い、双方での移植治療の確立を目指す。また、臍帯と骨髄のデータと比較することで、それぞれの治療効果や応用性の差異について検討する。
研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行したため、見込み額と執行額に違いが生じた。研究計画自体には大きな変更はないため、前年度の研究費も含め、予定通りの計画を進めていく。
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