研究課題/領域番号 |
25860716
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松瀬 大 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70596395)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 間葉系細胞 / シュワン細胞 / パーキンソン病 / 細胞移植治療 / 片側パーキンソン病モデルラット |
研究実績の概要 |
Wistar Ratから骨髄間葉系細胞を採取、培養し、beta-mercaptoethanol(BME)、レチノイン酸(RA)で処理した後、human basic fibroblast growth factor (FGF)、forskolin (FSK)、platelet-derived growth factor-AA (PDGF)、heregulin-beta1-EGF-domain (HRG)の栄養因子を加えることで、シュワン細胞を誘導した。シュワン細胞への誘導の確認は、P0、Krox20、S-100、O4等の発現を、RT-PCRおよび免疫細胞化学で調べることによって行った。移植細胞の標識については、当初はレンチウィルスを用いてGFPを標識していたが、標識率が悪く、GFPラットを用いて細胞の採取、誘導を行う方法に切り替えた。 動物モデルとしては、Wistar Ratに対し、まずは一側の黒質緻密層にカテコールアミン神経選択毒の6-ハイドロキシドパミン(6-OHDA)を注入して、片側パーキンソン病モデルラットを作成。アポモルフィン誘発回転運動が10回/分以上のものを採用した。モデルラットの黒質緻密層に対し、細胞を移植。移植細胞は、細胞なし(vehicle)、誘導前間葉系細胞、誘導シュワン細胞群と3群で行った。 しかしこのモデルでは、モデル作成が安定せず、同一条件でのモデル作成、移殖が困難であることが分かった。そのため、6-OHDAを線条体へ注入、線条体へ細胞移植するモデルへ変更を行って、再度移植実験を施行している。 移植群は、個体によっては移植後1-2週頃から回転運動の減少を認めているものの、全体としては現時点で有意な改善までは示せていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度には、引き続きパーキンソンモデルラットを作成し、間葉系細胞由来のシュワン細胞の移植実験を行う予定であったが、従来予定していた、黒質へ6-OHDAを注入するモデルでは、モデル作成が安定せず、線条体へ注入するモデルへ変更が必要となった。この変更のため、平成26年度に予定していた実験計画に遅延が生じ、期間延長の申請を行うに至った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、骨髄間葉系細胞からのシュワン細胞の誘導と、パーキンソン病モデルの作成、モデルへの細胞移植を行い、行動、組織学的評価を行う。モデル作成、移植方法を変更したため、再度十分数の移植実験を行う。移植細胞の生着率にも注目し、不良であれば、移植方法の再検討や、免疫抑制剤の使用を行うなどの対策をとる。移植後短期での組織評価も十分に行い、移殖後の移植細胞動態についても十分評価する。 移植細胞についてはMAG、MBP、GFAP、O4、P0等の発現について免疫組織化学的評価を行い、host細胞においてはhostの細胞に関してはDAT、TH等のドパミン産生細胞のマーカーで調べる。移植により、host細胞のドパミン産生細胞への分化以外にも、神経幹細胞の増殖や、成熟神経細胞の増殖を来たす可能性もあり、hostの脳におけるpax6、sox2、NeuN、Neurofilamentなどの発現も確認する。これらの発現を定量的にも評価する。また、移植細胞の分布や、移植細胞とhostのドパミン産生細胞や他の神経系細胞との局在の関係についても、免疫組織化学的に確認する。 良好な細胞移植方法が確立したら、シュワン細胞誘導の段階毎にGDNF、FGF-20の発現を定量PCR等で確認した上で、レトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入法により、GDNF、FGF-20の発現を促進させた誘導シュワン細胞を作成。これらについてもモデル動物に対する細胞移植を行い、組織学的評価と機能評価を行う。 これらの実験を踏まえ、最も細胞移植に効果的な骨髄間葉系由来シュワン細胞の樹立を行う。また、臍帯由来間葉系細胞においても同様の実験を行い、双方での移植治療の確立を目指す。また、臍帯と骨髄のデータと比較することで、それぞれの治療効果や応用性の 差異について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には、引き続きパーキンソンモデルラットを作成し、間葉系細胞由来のシュワン細胞の移植実験を行う予定であったが、従来予定していた、黒質へ6-OHDAを注入するモデルでは、モデル作成が安定せず、線条体へ注入するモデルへ変更が必要となった。この変更のため、平成26年度に予定していた実験計画に遅延が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には引き続き、線条体へ注入するモデルを作成し、細胞移植実験と評価を行うため、未使用額は実験動物の飼育費、購入費、細胞培養に関する試薬、その他消耗品に充当することとしたい。
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