研究課題
若手研究(B)
平成25年度の実験計画として、1)運動ニューロン様細胞のNSC-34 細胞に、野生型および変異型TDP-43 (M337V) あるいは、野生型および変異型FUS/TLS (R521C、R514S、G492Efs) 遺伝子をリポフェクション法を用いて導入し、G418 (0.8mg/mL)にて選択し、安定発現細胞株を確立する。2)1)で確立された安定発現株について、BiP, PDIなどの小胞体シャペロン、ATF6、IRE-1、PERKなどの小胞体ストレスセンサーの活性化、小胞体関連アポトーシスで働く、Caspase-12、CHOPの発現をウェスタンブロット法やRT-PCR法により評価する。3)1)の細胞における細胞死の有無を、PI法やAnnexin Vなどにより評価することを掲げた。1)についてはTDP-43およびFUSとも安定発現細胞株の樹立を行ったが、いずれも発現量が比較的低めに抑えられており、2)の解析において有意な小胞体ストレス関連マーカーの差異は見出せなかった。そこでまずFUSの一過性発現系を用いて、野生型および変異型(R521C、R514S、G492Efs)FUSをNSC-34 細胞に過剰発現し、2)および3)の解析を行った。野生型および変異型の間で、細胞死および細胞増殖能のいずれにも有意な差異は見られなかった。しかしウェスタンブロット法でのATF6およびBiP、GRP94、Calnexin、Caspase-12,CHOPの蛋白発現は変異型FUS発現細胞で有意に高いことが示され、FUS変異が関連するALSにおいても小胞体ストレスが関与する可能性が疑われた。
2: おおむね順調に進展している
当初は、さらにTDP-43あるいはFUS発現細胞にDerlin-1を過剰発現し、小胞体ストレスマーカーやアポトーシスシグナルへの影響、TDP-43あるいはFUSの細胞内蓄積への影響、細胞生存性への影響の評価を完了する予定であったが、現在進行中である。
今後の研究の展開として、1)Derlin-1をリポフェクションにより過剰発現後、超遠心法によりマイクロゾーム分画を採取し、抗TDP-43あるいは、FUS/TLS抗体によるウェスタンブロット法で小胞体内TDP-43あるいは、FUS/TLS蓄積を比較・定量する。2)Derlin-1過剰発現の細胞死に対する影響を評価するため、Flow cytometry、LDH assay、MTT assayなどを用いて、細胞毒性を比較する。3)Derlin-1過剰発現がUPR下流シグナルやアポトーシスシグナルに及ぼす影響を評価するために、ATF-6、IRE1α、PERK、CHOP、caspase-12, 9, 3、Bcl-2、Baxなどの各種パラメーターについて免疫染色、Western blot法、RT-PCR法を用いて比較することなどを計画している。
本年度にDerlin-1を発現可能なアデノ随伴ウイルスベクターを作成予定であったが未完成であり、来年度に想定以上に培養細胞や動物実験に経費を要することが予想されるため、次年度使用額をもって調整予定のため。Derlin-1を発現可能なアデノ随伴ウイルスベクターを作成するために細胞培養や動物への接種実験を行う予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Clin. Neurol. Neurosurg.
巻: 115 ページ: 603-606
10.1016/j.clineuro.2012.07.019.