研究課題
申請者らは、致死的神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の根本的治療法の確立を最終目標に掲げている。我々は先行研究において、SOD1変異を有するALSモデルの運動ニューロン変性に小胞体ストレスが関与し、さらに抗小胞体ストレス作用を有するDerlin-1およびBiP、DJ-1の過剰発現が変異SOD1による神経変性を抑制することをin vitroの実験系を用いて明らかにした。さらに本研究において、昨年度までに野生型および変異型(R521C、R514S、G492Efs)FUSをマウス運動ニューロン様の培養細胞(NSC-34細胞)に遺伝子導入し、小胞体ストレス各種マーカーの発現の差異を検討したところ、ウェスタンブロット法での解析では、変異FUSを発現する細胞において、ATF6およびBiP、GRP94、Calnexin、Caspase-12、CHOPの蛋白発現が亢進しており、FUS変異を有するALSモデルにおいても小胞体ストレスが関与することを明らかにした。平成26年度の実験計画として、Derlin-1過剰発現がUPR下流シグナルやアポトーシスシグナルに及ぼす影響を評価するために、ATF-6、IRE1α、PERK、CHOP、caspase-12、9、3、Bcl-2、Baxなどの各種パラメーターについてウェスタンブロット法を用いて比較したが、現時点での解析では顕著な小胞体ストレス軽減効果は確認出来ていない。今後、免疫染色やRT-PCR法による評価や、より強力な小胞体ストレス軽減効果を有する分子や薬剤の探索に展開する予定である。
3: やや遅れている
Derlin-1過剰発現がUPR下流シグナルやアポトーシスシグナルに及ぼす影響を評価するために、ATF-6、IRE1α、PERK、CHOP、caspase-12、9、3、Bcl-2、Baxなどの各種パラメーターについてウェスタンブロット法を行ったが、現時点での解析では顕著な小胞体ストレス軽減効果は確認出来ていない。これはDerlin-1遺伝子導入の効率が必ずしも十分でなかった可能性があり、導入効率を高める遺伝子導入法を再検討したり、より強力な小胞体ストレス軽減効果を有する分子や薬剤を探索したりする必要があったため。
今後の研究の展開として、弧発性ALSでも蓄積が証明されているTDP-43を発現する培養細胞系においても、小胞体ストレスの関与を明らかにするとともに、SOD1やFUS、TDP-43に共通して小胞体ストレスを軽減する可能性のある分子や薬剤を効率よく探索できるアッセイ系の確立を行い、治療候補薬剤の探索に展開する予定である。
SOD1やFUS、TDP-43の異常蓄積に対して、共通して小胞体ストレス軽減効果を有する薬剤もしくは分子を効率的にスクリーニングするアッセイ系を確立する必要が有り、継続的な資金が必要と考えられため。
SOD1やFUS、TDP-43の異常蓄積に対して、共通して小胞体ストレス軽減効果を有する薬剤もしくは分子を効率的にスクリーニングするアッセイ系を確立する。
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