研究課題
若手研究(B)
本年度はHAM高発症型のイラン・ジャマイカ型HTLV-1と日本型HTLV-1のウイルスの性状解析を行った。予備実験の結果から、イラン・ジャマイカ型は日本型よりもRexの発現が高く、Taxの発現が低い可能性が示唆された。Rex・Tax両タンパクをコードするpX mRNA発現ベクターおよびHTLV-1感染性クローンを293T細胞にトランスフェクションし、それぞれの発現をWestern Blottingで調べた。その結果、いずれの発現ベクターを用いた場合でも、イラン・ジャマイカ型ではRexは約9倍、Taxは約2倍の発現亢進が認められた。この発現亢進がタンパクの安定性に起因するかを、両型のRexあるいはTax発現ベクターとシクロヘキシミドを用いて解析した結果、タンパクの安定性にはほとんど差が認められなかった。この結果から発現量の差はタンパク産生の差が原因であると考えられた。次に、それぞれのHTLV-1感染性クローン293T細胞のトランスフェクションし、ウイルス産生量をELISA法により検討した結果、イラン・ジャマイカ型は日本型よりも約2倍のウイルスを産生することが明らかになった。また、それぞれの感染性クローンを用いて樹立したHTLV-1感染Jurkat細胞におけるウイルスmRNAの発現量をRT-PCR法により比較した。イラン・ジャマイカ型ではfull length viral mRNA /doubly-spliced pX mRNAの比率が日本型よりも顕著に高いことが示された。以上の結果から、イラン・ジャマイカ型HTLV-1はTaxタンパクによる転写量の亢進だけでなく、Rexタンパクの発現が高いために、unspliced formであるfull length mRNAの割合が増加し、その結果HTLV-1産生が亢進すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度はin vitroにおけるウイルスの性状解析を行い、Rex/Taxタンパクの発現、ウイルス産生量、ウイルスmRNA発現パターンについて、イラン・ジャマイカ型HTLV-1と日本型HTLV-1の違いを検討し、概ね予想した結果が得られた。
今後はイラン・ジャマイカ型と日本型には複数の塩基置換があるため、各種点変異体を作成、ウイルス性状の違いの原因となる塩基を同定する。また、塩基置換によりRexあるいはTaxの機能にどのような違いが生じるかを検討する。
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