研究課題/領域番号 |
25860730
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
田片 将士 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60617984)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗Sema4D抗体 / 神経幹細胞 / 脳梗塞 |
研究概要 |
目的:虚血性脳血管障害後に生じる脳の炎症反応 (Post-stroke inflammation) は神経細胞障害の増強と神経再生機転の亢進という二面性をもっている。本研究では、脳梗塞の大きさや程度が一定で再現性に優れたマウス脳梗塞モデルと、神経幹細胞の培養システムを用い、リンパ球に発現するSema4Dの抑制が脳梗塞と神経再生にいかに影響を及ぼすかを検討し、T細胞のSema4Dを標的とした虚血性脳傷害に対する神経再生療法の開発に繋げていくことを目的とする。 方法:①脳梗塞作製:6週齢、雄性CB-17/Icr-1/1Jcl(CB17マウス)およびその免疫不全マウス (SCID)を用い、大脳皮質梗塞を作製した。②免疫組織化学:脳梗塞マウスの脳切片において、神経幹細胞、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞、オリゴデンドロサイト、髄鞘 (Myelin Basic Protein)、血管内皮細胞、血管周皮細胞の発現、分布を検討した。また、Active Caspase3との二重染色によるアポトーシスの評価を行った。さらに、MAP2, NeuNの免疫染色切片から梗塞脳体積を算出し、抗Sema4D抗体の脳梗塞縮小効果を解析した。③PCR:脳梗塞後の神経再生機転を半定量的に評価する目的でPCRを用いて遺伝子発現量を測定した。④抗Sema4D抗体が脳梗塞後のマウス神経機能にいかなる影響を及ぼすかを行動学的に検討した。 結果:抗Sema4D抗体投与マウスの脳梗塞体積はコントロールに比し、有意に縮小していた。また、梗塞側大脳皮質の神経幹細胞は有意に増加していた。梗塞組織を浮遊系、接着系に培養したところ、浮遊系に比べ接着系のほうがiNSPCの増殖が見られた。さらに梗塞巣組織から抽出したRNAを使用したPCRでは抗Sema4D抗体によるNestin/Sox2の発現増強が確認された。抗Sema4D抗体投与マウスでは脳梗塞による活動性の亢進が抑制されていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に挙げた計画に沿って研究を実施し、概要に記したとおり成果が得られている。ただし、平成25年度に実施計画していたリンパ球の幹細胞毒性試験については現在研究実施中であるが、成果が得られていないため おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
抗Sema4D抗体の神経幹細胞死抑制効果が示唆されたが、今後、脳梗塞巣から抽出したiNSPCへの直接作用を活性化リンパ球との共培養で抗Sema4D抗体による影響を検討することでその抑制効果を評価していきたいと考えている。また、抗Sema4D抗体を投与した脳梗塞マウスの神経機能に関する評価をさらに詳細な行動テストにて詳細に検討すことを計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用額はおおむね予定通りであり、残額は誤差範囲内と思われる。 iNSPCへの直接作用を確かめるための活性化リンパ球と抗Sema4D抗体による影響を検討する実験に使用するマウス購入費あるいはモデルマウス作成費用、試薬、その他 消耗品など、さらに行動テストにかかわる費用に使用予定である。
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