研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は原因遺伝子が近年多く同定されてきたが、未だに治療法が確立されておらず、病態解明が切望されている。近年、C9ORF72遺伝子非翻訳領域のGGGGCCリピートの異常伸長RNAが発症原因としてALS患者から発見された。驚くべきことに、神経細胞内における異常蛋白質の蓄積により形成される封入体から、既知ALS原因分子p62とTDP-43、もしくはUBQLN2が発見された。このことから、異常伸長リピートRNAを中心に、これら分子間の相互関係を明らかにすることがALSの共通発症分子メカニズムの解明につながると考えられている。H25年度には、GGGGCCリピートRNAを発現する新規ALSモデルショウジョウバエの樹立を樹立した。このALSモデルでは患者同様、顕著な運動機能障害と寿命短縮が認められた。さらに既知ALS原因遺伝子p62、TDP-43、FUSとの遺伝学的相互作用解析を行ったところ、p62は相互作用しなかったが、TDP-43およびFUSはそれぞれ神経への発現による表現型が増悪および改善し、相互作用することが分かった。本研究開始後、患者において異常伸長リピートRNAが翻訳されジペプチドリピート(DPR)タンパク質が合成され、神経細胞内にそれらが蓄積していることが報告され、発症病態の可能性が示された。そこでH26年度には樹立した新規モデルにおいて、DPRタンパク質の有無を調べたところ、少なくとも2種類のDPRタンパク質が発現していた。以上の結果から樹立した新規ALSモデルショウジョウバエは患者の分子病態を反映したモデルであり、GGGGCCリピートによるALS発症にFUSの関与が示唆された。
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