研究課題
組み換えアデノウイルスによる遺伝子導入法を用いてマウスの肝臓選択的に解糖系の律速酵素であるグルコキナーゼを過剰発現させたところ、解糖系、グリコーゲン合成および脂肪酸合成に関わる酵素群の遺伝子発現が増加し、肝グリコーゲンおよび中性脂肪含量が増加した。このマウスでは、肩甲骨間に存在する褐色脂肪組織(BAT)における熱産生抑制、安静時の心拍数低下および内蔵脂肪重量の増加を認めた。さらにこのマウスでは、BAT交感神経や心臓交感神経の活性制御に重要な役割を果たす延髄吻側縫線核における神経活性の低下を認めた。この結果は、肝糖代謝の変化がBAT熱産生および心臓交感神経の活性を制御することを示すものであり、その共通の機序として延髄吻側縫線核の活性低下の関与が明らかになった。以上より、肝臓と褐色脂肪組織との臓器連関に加えて、肝臓と心臓との新たな臓器間神経ネットワーク機構を見出すことができた(期間全体)。DNAマイクロアレイを用いた肝臓の遺伝子発現解析では、グルコキナーゼを過剰発現させたマウスにおいて、解糖系、グリコーゲン合成および脂肪酸合成に関わる酵素群の発現上昇を含めて有意な発現変化を示した遺伝子が相当数認められた。現在、有意な発現変化を示した遺伝子群の中から、肝臓・褐色脂肪組織の連関経路を刺激する候補分子のスクリーニングを継続中であり、得られた候補分子をアデノウイルス遺伝子導入法により肝臓選択的に発現させたのち、褐色脂肪組織を含め自律神経支配下にある諸臓器の解析を行っている(平成26年度)。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件)
PLoS One
巻: 9 ページ: e110446
10.1371/journal.pone.0110446
巻: 9 ページ: e88602
10.1371/journal.pone.0088602
内分泌・糖尿病・代謝内科
巻: 38(1) ページ: 9-13